かなり人気がある刑法基本書の一つ。
構成要件ごとに、詳しい説明が載っているので、頭の中で整理しやすい。
ただし分量は多いため、この本を何回も読んで覚えるというのは効率が悪い。
刑法の概観を掴みたいという方にはお勧めはしない。
辞書的な使い方をしている人も周囲には見受けられた。
個人的には注釈のつけ方が、前田先生の基本書と異なり、本当に参考文献のみの注釈なので、
時間が足りない受験生としてはわざわざ注釈の文献にまで当たることは考えづらいので、
意味がないようには感じた。
ところどころ文章がわかりにくいところもあったが、全体的には評価できる。

　最近は学会でも結果無価値論が主流になり,行為無価値論は傍流になった観がありますが,実務は判例が全てであり,判例を理解するには結果無価値論に偏ることは得策ではありません。また,我が国の行為無価値論は純粋な意味での行為無価値論ではなく,結果無価値論に立脚しながら行為の無価値性を加味して考えるというものですから,非常に現実的で,一般の感覚にマッチしていると言えます。反対に結果無価値論は机上の理論に過ぎないと言っても過言ではありません。
　そういう意味で,総論で優れた教科書を書かれた大谷博士の本書を各論の学習に使うのは司法試験を受験しようとする方にとって,立証責任の軽減にも繋がり,また実務家になってからのことも考慮すれば当然と言えるでしょう。
　この本を読むと大谷博士がかなり司法試験受験生を意識して記述している箇所があり,受験生には親切なつくりになっている点もよいのではないかと思います。
　ただ,説明が演繹的である点は実務家の目にはいまひとつと映るかもしれません。

　行為無価値論から記述された体系書である。教科書ではないので、ある程度勉強の進んでいる方でないと難しいかもしれません。しかし、それでも“このての部類”では、簡易な方に位置できる記述となっていますので、辞書を片手に読み進んでいくのがよいでしょう。

　総論のレビューにもありますが、“このての部類”の教科書業界では、結果無価値論が全盛ですが、判例を理解するには、その限度において行為無価値の考え方が必要です。
　特に、個々のの犯罪類型（このような表現に反対の方もあると思いますが、「一般的な意味で」の意味でご理解願います。）とその成否を勉強する各論ですから、総論よりも重要です。
　その点で、記述に用いられている判例は豊富です。受験生の方、特に新司法試験受験生の方は必要に応じて、判例百選のような判例集にあたられるのがよいでしょう。

【研究者の方へ】
　星２，５ぐらいの評価です。版を重ねるたびに、他説に対する批判と自説に対する論証が一段と薄くなってきているような感じがします。どうでしょうか？