だからアルバム全体に「コンセプト無し」なんて言われるのでしょうけれど、そんなことは無いと思います。
アルバムを通して全部聴いてみてください。彼らは最初の「質問」からまた旅に出たのです。多くの光景に出会い、いろいろな人々に出会い、そして最後にオレンジの木の下でしばし休憩をとっている姿が目に浮かぶようです。
ゆったりとした語りからドラマチックなエンディングに向かい「心を開こう、それが始まりの合図」と繰り返し歌われる「バランス」は、ムーディーズのアルバム中でも白眉のエンディング曲だと思います。
この頃から、「セブンス=ソジャーン」までが、ムーディー=ブルースが最も充実していた時期だと思います。
なおCDになってからムーディー=ブルースのアルバムはどれも全曲通して聴きやすくなりました。
今ではCDの存在自体当たり前のことですが、昔LPレコードで聴いていたころは、途中でひっくり返さなければならなかったのですよ。
しかしアルバム全体を通して聴いてゆくと、非常にドラマチックなエンディングを演出しています。「心を開こう、また新しい未来へ向かおう」という誇り高き息吹を感じるのです。
曲間を開けず次の曲へつないでゆく手法は「サテンの夜」から一貫しており、このアルバムでも例外ではありません。
ムーディーズはここで小さな心の旅に出ていたのでしょう。各曲の印象から推察するに、旅先で出会ったいろいろな現象、人物、夢について曲を書いていったように思うのです。あくまでも私の想像ですけれど。
「バランス」の詩では、オレンジの木の下で一休みしている旅人をモチーフにして、彼らの世界観を積み重ねて行き、その感情は最後のコーラスで最高潮に達します。
以上そういった意味で、このアルバムは立派な「トータルアルバム」だと思います。私の中では5番目に好きなアルバムですが、エンディングの感動を比べてみると「童夢」の「マイ=ソング」の次に素晴らしいと思っています。