アニメは、ボスニアで父親が亡くなった直後から物語が始まり、
16話分使ってフランスまでの道中を描いているが、
原作では、フランスに辿り着くところから始まる。
これは恐らく、アニメでは『家なき娘』という邦題の通り、
長い旅の末に祖父に受け入れられるすべての過程を重視しているが、
原作は『家族で』という直訳の通り、元々ペリーヌが祖父に家族として
受け入れられる過程にのみ着眼点を置いているためだと思われる。
そのため、物語が始まってすぐに訪れる母親との死別シーンや、
パリカールとの別れも、アニメに比べて淡白な印象を受ける。
上巻の主な流れは、フランスでロバのパリカールを売り、母親が死に、
ペリーヌはたった一人で旅の目的地である、祖父のいるマロクールへ向かう。
苦難の末マロクールに辿り着くが、祖父は自分と母親をひどく恨んでおり、
ペリーヌは追い返されるのを恐れて名乗り出ることができなかった。
そこで祖父の経営する紡績工場で働き、やがて英語の才能を買われて、
祖父の側で通訳をするよう頼まれたところで終わる。
もう一つ、原作とアニメとで大きく違う点がある。
それは、原作では、ペリーヌがヴュルフランの孫であることが最後まで語られないのだ。
そのため、ペリーヌの、祖父に対する内面が一度として直接的には表現されず、
ひどく物足りない感じがする。
全体を通してアニメの方が楽しめるが、祖父に対すること以外はペリーヌの
内面もしっかり描かれているし、マロクールへの道中やマロクールで一人で
暮らしている光景の描写は細かく、読み応えがある。
一小説として、アニメを知らない人にもオススメできる作品だ。
エピソードは小説らしく、アニメとはまた違った楽しさが味わえます。
本を読む対象と、アニメを見る対象の想定年齢が違うので、無論すべての伏線をナレーターが解説してしまったりもしません。どうぞ、ペリーヌの冒険をお楽しみください。
ただし、この本には注意点が1つ。
それは、本書表紙の折り返しが、アニメのストーリーを知っている人を相手に、本小説最大の伏線を、スパッとネタバラシ!している点です。
純粋に小説として楽しみたい方は、折り返しにご注意を。