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動物のいのち

価格: ¥2,730
カテゴリ: 単行本
ブランド: 大月書店
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殺してたべるということ ★★★☆☆
某県の観光ダチョウ園では、ダチョウたちが放牧されていて、餌をあげたり乗ったりして遊ぶことができますが、併設のレストランではなんとダチョウ肉のステーキがメニューにあり、名物になっているんだそうです。臭みがなくて美味いらしいですが、牧場で遊んだ後では、なんとなく気まずい食事になりそうですね。

本書では動物のみが議論の対象になっていますが、そもそも私たちは植物も含めて生き物を殺して食べなくては生きていけない「罪深い」存在です。「殺して食べる」という普段は意識する事のない「事実」を、実の所、私たちはどのように捉えるべきなのでしょうか。
本書におけるクッツェーの講演は、架空の講演とそれに対する家族と聴衆の反応から成っています。メタフィクショナルな構成ですが、その複雑な語りは『敵あるいはフォー』で試みられた実験やプラトンの対話篇を連想させます。トマス・アクィナスや古代ギリシアの祭儀に関する言及があることから、著者の古典に対する意識は、形式的にも思想的にも明らかだと思います。
コステロの議論は、「独善的で論法がなっていない」とまでは思いませんが、同じ主張や比喩が繰り返され前進的に展開されず、聴衆に対して一方的に孤立感を深めていく印象を持ちます。思想自体も基本的にカフカや反発しながらもデカルトの流れを汲んでいるので、「限界のない共感」という概念ひとつ見てもどうしても二項対立的人間中心主義に足を引っ張られ、肝心なところで戯画的な表現に頼らざるをえず、屈折した形になっています。
リフレクションズでは、文学、生命倫理学、宗教学、霊長類学の研究者がそれぞれの立場から自由に発言していますが、個人的に、最後の二つのエッセイに感銘を受けました。
動物とは ★★★★☆
「哲学者と動物」、「詩人と動物」と題されプリンストン大学でおこなわれたクッツェーの2度の講演は、高名な小説家エリザベス・コステロが、ある大学からなんでも好きなテーマで話をしてくれるようにと招かれ、講演をするというフィクションだった。

クッツェーの講演と、それに応え、さまざまな学問領域の洞察を加えた序文と4つのリフレクションズで構成されているこの本は多少哲学的でもあった。コステロの意見を通じての私の意見は、結局人間はどの動物よりも弱いと言えるかもしれない。それ故、動物のなかでの人間の優位性と、力を誇示しているのかもしれない。それはきっと、他の動物を殺す事や、それらを哀れむという形で表れているだろうという事だ。読んだ後にも考えさせられるとても奥深い作品だ。