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鉄の時代 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-11)

価格: ¥2,100
カテゴリ: 単行本
ブランド: 河出書房新社
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白人か黒人かの区別 ★★★☆☆
南アフリカのケープタウンが舞台の小説です。

アパルトヘイトの制度自体について詳しく描かれてはおらず
制度が崩壊に向かう混乱期が時代背景になっています。

とはいえどれだけの理不尽な制度であったか、
白人の視点からの話ですが節々から読み取れます。

耳慣れない地名や言葉など
距離もそれ以外でも日本からは遠い国だったのだなと実感しました。

難点は、登場人物が白人か黒人か明記されないこと。
これがわかりづらいので、混乱しながら読むことになりました。
差別の構造がクリアになる ★★★★☆
末期ガンの白人女性が死を独りで迎えるということに耐えきれないあまり、
家の近所にいた黒人のホームレスを家に住まわせるというストーリー。
時代はまだアパルトヘイトが現存している南アフリカ。

南アフリカでアパルトヘイトというものがどう捉えられているか。
この本を読んでわかったのだが、実は、利益を得ている白人自体がアパルトヘイトを恥じているのです。
さらに、アパルトヘイトという制度を作った南アフリカという国家そのものを呪っている。
だからといって、黒人に対してリベラルでいられるかというとそうでもない。
近づけば近づくほど埋められない溝を感じて嫌悪感を抱いてしまう。
そして、そのような自分を恥じて、今度は自分を呪いはじめる・・・根深い差別の心のメカニズム。
ぼくたちが映画などで目にするだろうアメリカの黒人差別とはまた異なった南アフリカ独特の問題を、
確かな筆力で丁寧に描いてくれている。
読んでよかったです ★★★★★
「この土地のうえを、この南アフリカを歩いていると、だんだんいくつもの黒い顔のうえを歩いているような気がしてくるのよ」(150p)。
主人公である白人の老婦人がつぶやいたこの台詞が、アパルトヘイトを象徴しているような気がします。
このご婦人はガンを告知されてしまい、娘に遺書を残します。その遺書がこの作品の本文に当たります。
体制に抗おうとする子供達の悲惨な結末が描かれるなど、決して明るい話ばかりではありませんが、
アパルトヘイト下のアフリカに真っ向から向き合ったメッセージ性の強い作品です。
全体を貫く「怒り」 ★★★★★
池澤夏樹氏編集の世界文学全集の1冊。
クッツェーの小説は初めて読む。名前は知っていたが、ノーベル文学賞受賞とか言われるとかえって読む気がなくなるという天邪鬼な性格のせい。
南アフリカのアパルトヘイト末期を舞台に老婦人の娘への手紙という形式の小説。
甘ったるい感傷的なところは全くなく、全体を貫く「怒り」、この世の不条理さを訴えるような文章は、読むのが辛いぐらいだった。でも、読むのが止められない。
ありきたりの表現だけど、人間の尊厳とは何かを考えさせられた。
自問自答する末期がん患者 ★★★☆☆
翻訳も良いし、クッツェーの心理描写はとても奥深く生き生きしています。
主人公カレン(70歳・末期の癌で死が近いことを知った)の葛藤や迷いが物語りの大半を占めています。途中、ドライブに出かけたり他の登場人物との会話もありますが、この本はカレンがアメリカに住む娘宛に書いた遺書ということもあり、彼女の過去/現状/未来に対しての自問自答が延々と繰り返される。池澤夏樹氏の「ぼくがこの作品を選んだ理由」に、「差別は全ての国、全ての社会にある。しかしその心理をたいていの人は理解していない。」と書いてあったのを見て、アパルトヘイトや南アフリカの境遇について触れているのかと期待して購入しましたが、実際はカレンの不安や怒りについて書かれている部分が多く、社会派フィクションを期待していた自分には文化的バックグラウンドや物語の展開が浅く少々期待外れでした。アパルトヘイトに関して、というより死を間近にしたカレンに押し寄せる不安、欲、正義感等についての物語と感じました。
また、他のレビューにもありましたが、個人的にこの主人公に感情移入し難く彼女の煮え切らない思いや、一人でひたすら叱責する様子は、魅力的とは思えなかったのも残念です。むしろ浮浪者のファーカイルの方が面白く柔軟な人物でした。
結果として星3つという厳しい評価になってしまいましたが、さらっと読み進められる良い文体でした。