主人公の侍女である女性には自由はありません
妊娠する為の道具でしかない彼女の生活
ファシズム世界を行き抜く恐怖が全篇に漂い
読者である私も息を潜めて読んでしまいます
大事件がこの作品にあるわけではないのに、スリル一杯なのは
管理されてしまう恐怖を著者の巧みな旨さが背後にある作品だから
カナダを代表する作家は、日本ではあまり読まれないので知名度が低い
が、時間を割いて読んで後悔しない力作です
運良く出産可能、で社会に有益と判断されても、子供を産むための道具として、人間性を排除された形で他人の夫婦(子供のできない政府の高官夫婦)宅に配属され、愛の伴わない性行動のために日々生きることになる。「女に教育を受けさせるとろくなことがない」と言わんばかりに、文字を読むこともペンを持つことも禁止。自殺を防ぐ目的でガラスやシャンデリアが外されたり塞がれたりしており、言動は全てチェックされ、監視される。外出は必要最低限。常に全身と顔を覆い隠しておかなければならない。もし変な行動を起こせば処刑されるという恐ろしい世の中。観光でやってきた日本人を見て「あの人たちがうらやましい」と思う、そんな悲惨な国に変わっている。
女性の権利を剥奪し、出産のための道具にする、顔を隠す、監視される、そしてキリスト原理主義・・・・なんとなくアルカイダ政権下でのアフガニスタン女性を思いだした。宗教こそ違え、この物語がかなり前に書かれたことを考えると、この作者は現代社会を予見していたようですごいと思った。
どの国でもいつこのような理不尽な社会が成立するかわからない。小説の中ではアメリカだが、本当に近い将来アメリカで似たようなことが起こらないとは誰も言えないだろう。そして、もしかすれば、その「国」は日本である可能性だってあるのだ。
私自身、女として、アフガニスタンなどの虐げられ、権利を剥奪されて生きてきた女性たちが本当に可哀相で、自分がそういう地域に生まれなかったことは幸運だと思うし、彼女たちのために何かできることはないのか、また今後この小説のような社会を作らないためにできることはないのかを考えさせられた。