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ディビザデロ通り (新潮クレスト・ブックス)

価格: ¥2,310
カテゴリ: 単行本
ブランド: 新潮社
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"すべてはコラージュだ” ★★★★★
"すべてはコラージュだ。私たちが何をつくるのか、なぜつくるのか、どんな人に惹かれるのか、なぜ忘れることができないのか。すべてはコラージュであり、遺伝でさえそうなのだ。私たちの中には他人が隠れている。短期間しか知らなかった人さえ隠れていて私たちは死ぬまでそれを抱え続ける。国境を越えるたびに、それを自分の中に封じ込める。"(訳者あとがきの中のinterviewより)

時空も超えて、一見関係もない人々の話が紡ぎだされるが、場面を読み込むとその時々の登場人物の思いが関係した人の中に生き続け次の世代に伝わっていくのがわかる。ある人間関係が、次の世代の別の人間関係に投影されている。自分自身の形成に関わった人たちの顔が思い浮かぶ、会ったこともない人もいるはず、などと自分の来し方を考えてしまう。

極上の読書体験です。"English patient"を読んだ方も読んでない方も、詩的な世界を堪能してください。
収斂しない物語 ★★★★☆
まず、それぞれ血縁のない兄一人妹二人が、まるで家族のように暮らしている。クープ、そしてアンナとクレア。三人はある嵐の夜にバラバラになり、その後それぞれの人生を歩んでゆくことになる。やがて兄クープの物語と妹クレアの物語がふれ合い、より合わされる。一方もう一人の妹アンナは単身フランスに渡り、今は亡きリュシアン・セグーラという作家を研究するうち、そのリュシアンと晩年に親しかったらしいラファエロと出会う。ふたつの出会いは、しかしそこでプッツリと途切れてしまう。

後半は、時代をさかのぼり、アンナが研究する作家リュシアンその人の物語となる。作家リュシアンの物語はひじょうに丹念に描きこまれてゆく。隣の人妻マリ・ネージュとの出会いと交流、破綻することになる結婚生活、そして当時まだ幼かったラファエロとの出会い……。作品は、リュシアンの物語とともに閉じられてしまい、とうとうクープとアンナとクレアのその後を語ろうとしない。

クープとクレアの物語にしても、アンナとラファエロの物語にしても、これが独立した短中編であれば、まぁ穏当な終わり方だっただろう。しかし長編として読むと、やはり中途半端という印象がぬぐえない。「下の句のない短歌」とでもいったところ。私は、三人の物語がやがて収斂して、嵐の夜の記憶を乗りこえるという和解と癒しのエンディングを想像しながら読み進めていった。そして読後、作者はたぶん、私が想像したような事それこそを拒否したかったのだろうと気づいた。

はっきりそうとは描かれないものの、作家リュシアンの物語が、アンナとラファエロの物語にまったく異なった角度から光りを当てることになり、さらにクープとアンナとクレアの物語にも光りを当てることになる。いくつかのリフレインがあり、作家リュシアンが兄一人妹二人の父親にもオーバーラップしそうになる。
読者を選ぶかもしれないけれど、余韻の残る作品でした。