自分らしさ、本当の自分、自己実現、オンリーワン...実存主義の大衆化だろうと思っていたが、これも一つの身動きのとれない原理主義なのかもしれない。
フェミニズムやジェンダー論もその延長にあるから反って男女双方に余計な苦しみを与えているのではないだろうか。
現代ほど、勝ち組・負け組を無理やり先鋭化させる時代はないだろう。
この本ではうつ病の概念の時代的変遷や現代に生じた新しいタイプの鬱などに言及し示唆に富む。
著者はSSRI依存への危惧とともに、うつ病を生じさせる「状況構成」という概念に強く関心を促す。脳科学(生理、薬理等)の発展により薬だけで事足れりという風潮にも批判的である。また、昨今注目を集めている認知療法を過大評価することへの懐疑をそれとなくにおいわせる。
総論としては概ね納得した。ただし、具体性に欠ける。
願わくば、著者が普段うつ病者に対しどのような治療・臨床を実践しているのか、投薬以外に何をしているのか症例呈示し、治療経過、患者の状況構成の更新の経緯を記述してほしかった。
また、社会福祉士・精神保健福祉士、臨床心理士は建前上は必要とされているが、現場において本当に自分たちは必要な職種なのか、患者に役立っているのかと疑問を抱える人材に対し、彼らがうつ病者の状況構成更新にどう資することが可能なのかについても指針を提示してほしい。なにより、患者に対して、具体的にどうすれば絶望から希望への転換が図れるのか、ヒントとなる症例呈示が必要であろう。
その意味で、続編として各論・臨床論を期待したい。
要約すると、
1.過度に個人責任を押し付けられる
↓
2.絶えられない人が出てくる
↓
3.(-_-)うつ
とのことです。
そうならないために社会の価値観とは違った
自分独自の人生観を見つけろとのこと。
文章の論理構成は非常にしっかりしていて、読みやすかったです。
しかし、やたら難しい語彙をわざと使っているような感じがしていやでした。
(自分の語彙力がたりないのかも知れませんが・・・)
「新自由主義」がうつ病に影響するという発想はおもしろくてかったんですが、
最後の結論が教科書的で表紙抜けしました。
それでも私には希望を与えてくれたので星4つです。