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黒い時計の旅 (白水uブックス)

価格: ¥1,620
カテゴリ: 単行本
ブランド: 白水社
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純度の高い想像力が必要な作品 ★☆☆☆☆
アメリカ出身の小説家,スティーヴ・エリクソンによるイマジネーティブな長編小説。

この作品を読み解くには、現実の重力から解放され、幻想の大海に乗り出す意欲と好奇心が必要。
日常のごたごたが頭から離れない読者や、純粋な想像力の世界に没頭する自信のない読者には不向きかもしれない。
世界一の高値がつく、最高の「妄想」 ★★★★★
人間という生き物が持ちうる想像力の凄みは、『黒い時計の旅』でひとつの到達点を見せる。

本書があまりに面白すぎて、私は本当に参った。小説を「お金を払ってでも聞くに値する与太話」と定義するなら、私はこの与太話を、上等の嗅ぎタバコ入れに収めて持ち歩きたい。いつでもそのエッセンスを嗅いで恍惚とした気分になれるように。

1945年以降もヒトラーが生きている、パラレルワールド。「あちら側」と現実の20世紀を往来する主人公。「それ何ていう姫ちゃんのリボン?」。違う、全然違う。こちらの姫ちゃんは、足の付け根に世界の中心がある、グロテスクな大男だ。おまけに、ナチス総統閣下専用のポルノグラファーだ。 

この本がすごいのは、この荒唐無稽な設定が単なる掴みに過ぎないところ。小説の魅力的なあらすじに胸を膨らませて、実際に読んでみたらがっかりした、という経験は山ほどある。この本は、全く逆。事前に期待していた以上の興奮を与えてくれる。人が持ちうるあらゆる欲望が跳梁跋扈する。次の一文字が気になって仕方が無い、巧みにこちらを酔わせる筆致。読み手のペースはどんどん崩されていく。

それでいて最後は、胸がしめつけられるようで、やりきれない。人類二大徒労である、恋愛と戦争が大きな軸になっているからだろう。他人を乞うことは、正義を標榜することは、とてもむなしい。わかっていることだけど、それを見事に見せつけられると、コンプレックスを否応なく映す鏡の前で途方に暮れたような気分になる。そのような欲があるからこそ、このような素晴らしい物語もまた、生まれ得るのだろうけど。

理性は現実と折り合いをつけるためにある。感性は、現実を易々と跳躍するためにある。モノなんかで、人間はトべない。欲望という跳ね台を踏み、わたしたちはおのれの頭だけを使って、信じられない高みまでトリップすることが、できる。それを痛感させられる小説だ。(byちゅら@<おとなの社会科>)
すごいです ★★★★★
この本はちょっとすごい。
(ヒトラーが死んでいなかったら云々……という、あらすじの紹介のしかたがちょっとまちがっていると思います。が、説明ができなかったのだろうというのも、よくわかります。)
罪と愛 ★★★★★
1989年のスティーヴ・エリクソンの作品。あまりの面白さにびっくりしました。知らぬ間に、ヒトラーの為のエロ小説家になってしまった男バニングの話が中核なのだが、ヒトラーのリビドーを意のままに操るという事であり、その自分の欲望が促したリビドーが世界の支配者として突き進んでいくヒトラーの行動に影響を及ぼしていく。この男が普通で無い事を示す生い立ちからの描き方、エロ小説を書く様になった契機、トラウマとその背景も克明に描かれ、男女の奔放な性も描かれ、この男もその例外では無い。やがて男は結婚し、子供も出来る。しかし、男は現実の妻や娘への愛情とも天秤にかけながら、男の欲望が擬人化された「女」と愛の行為にふける。それはマスターベーションであり、まさにピグマリオンでもある。そしてそれは読者であるヒトラーのトラウマを癒してくれる「愛人」にもなり、一人の実在の女性デーニアに歪んだ愛の権化、幻夢は襲いかかる。それは歴史をも左右する事になろうとは誰も気付かない。バニングの世紀とデーニアの世紀と途中で二つに枝分かれした並行世界が互いに親密にリンクし合う幻想小説となっている。しかし、単に男個人の「欲望」という意味だけで無く、その「性欲」が眼に見えない、この世を左右させる力を持つ「黒い時計」として影の様に、これも擬人化された文体でバニングに知覚され、デーニアには体感される幻視描写は圧巻。男の性欲をこの様に描いた小説はあまり類を見ないし、そこから発展して思想を形成している所が何より素晴らしい。全てが統一した「黒い時間」の彷徨を示しており、「隠された部屋」で巡り合う。それは人間の異性への愛の総体として表現される様でもあり、罪とは、愛とは、人とは何かを問う作品となっている。表現力も文章構成も驚嘆すべき物で、只者では無い。この作者の作品を初めて読み訳した訳者が後書きに書いている「読んでみて下さい、この人凄いですから」と。私も同感。
時をたぐり寄せる ★★★★★
冒頭から読者を圧倒する鮮烈なイメージと混交するストーリーは、登場人物たちを時の狭間で翻弄する。
そして彼らがついに家路に着いたとき、歴史は語られることで生まれるのだと読者は思い知らされる。
物語への、歴史への妄想的欲望が炸裂する傑作。
祝・復刊!