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ハーレーダビッドソン伝説

価格: ¥2,415
カテゴリ: 単行本
ブランド: 早川書房
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何故、反逆や自由を標榜するハーレー乗りの多くが同じ格好をするのかが良くわかる。 ★★★★★
 ハーレーはコカコーラと並ぶ「米国」産業の産物であるが、単純な財の意味を越えて、イスラム社会でもある種の好意をもって受け入れられている「自由」のイコン(この表現自体はキリスト教的で恐縮だが)でもある。そのハーレーは日本の小・中学生にも名の知られたバイクメーカーであるが、知名度の高さ故に多様な意味づけをなされてもいる。そうした「意味」の多様性、多義性は高性能・高信頼性という一次元的価値基準でしか測られることがないホンダやヤマハは足元に及ばない。HDのそうした多様な記号性の背景を知るのに良書。本書に記載されている事がHDの全てでは勿論ないが、米国内におけるHDの社会的意味の一部は確実に報告されている。
 ハーレー・ダビッドソンというメーカーは20世紀の極めて初期に創業され、今日まで存続している稀有なメーカーである。創立以降、世界恐慌、二つの世界大戦、朝鮮戦争、ベトナム戦争、ホンダやヤマハなどの日本製高性能バイクの米国市場進出、ITバブル崩壊、サブプライム発端金融危機からの世界同時不況と、数多くの変節点を生き抜いてきた。こうした激動の20世紀において、ハーレーはアメリカ人、特にエスタブリッシュメントとは到底呼ばれない階層の人々の米国への求心力の象徴としての「意味」を、じつはハーレー本社はそうとは望んではいなかったが、メーカーの思惑とは無関係にハーレー愛好家達によって「アメリカ合衆国的」なるものの象徴の役割を与えられたのである。
 ハーレー・ダビッドソンは、一匹オオカミ気取りの単なる粗野な乱暴者たちによって愛されたのではない。複雑に変化する20〜21世紀の米国社会において、その変化から取り残されそうに感じているが同時に強い愛国心を持つ人々(たとえばベトナム帰還兵や経済成長の恩恵に浴せなかった中流以下の白人たち)が、エスタブリッシュメントの御坊ちゃま達に反逆の意思をしめすそのために、団結してグループを結成する動機があったのである。彼らはその弱い経済的基盤ゆえに、保険に加入する事ができなかったケースが多い。だから彼らは、ハーレーに乗るもの同士の連帯によって仲間の窮地を救うという互助の精神を尊重したのである。彼らはハーレーに乗ることで、互いに似たような姿形をする事で、米国における自身の立場を表現し、また、社会に対する生き方を主張したのである。
 ところが近年、比較的エスタブリッシュメントに近い、高収入・高学歴の人々が自由と反逆をファッションの文脈のなかで愛好するようになってきた。こうした人々を顧客として取り込むことに成功したのが、近年のハーレーの復活の原動力である。
 ハーレー・ダビッドソンに乗ることは、ファッションの文脈だけでは解釈できない行為…である場合もあることを、本書は教えてくれる。