全編を通じてキーワードとなっているのが、創業時から現在に至るまで続けているという“掃除”である。誰に強制するわけでもなく、トイレをはじめとした社内や社外近辺などを丁寧に掃除してきたことが、社員の心を落ち着かせ、ひいては取引先の信頼につながったという。
鍵山は、「必ずしも、自分がしなくてもいいことを少し多めにやる」ことが、人間としての器の大きさや魅力につながると語っている。自分がしなくてもいいこととは、掃除や後片づけ、世話役といった細々としたことを指す。こういったことを積極的に引き受ける行動や心構えが、自己鍛錬になり、巡り巡ってほかの人から評価されるポイントとなっていくという。とはいえ、他人の評価だけを目的にしていると、その卑しい気持ちが顔に現れる。無の心で続けることが大切なのだ。
掃除を続けることでさまざまな気づきがあったという著者の教えは、誰にでも思い当たることだけに、心に響く。本書は、ビジネスパーソンだけではなく、教育に携わる人や、子供を持つ親にもおすすめしたい。一日一話ずつ読み進めていくのも良いが、一話が非常に短く、簡潔にまとまっているので、読み通してしまうことも苦にならない。(朝倉真弓)