本書は、VoIPの基本的な技術の解説書だ。VoIPの技術は、音声ネットワーキング技術とIPネットワーキング技術の複合であるため、本書ではその両方の技術の基礎についても詳しく説明している。
第1部では、PSTNの概要やテレフォニーの技術、そして従来のTDMネットワーク方式と、パケット方式による音声伝達の相違点が掲載されており、音声分野の情報がひと通りカバーされている。IPネットワーク技術者が音声の基礎を学べるほか、音声の技術者もリファレンスとして利用できるようになっている。
第2部では、OSIモデルやIPプロトコルの解説、デジタル音声符号化技術や品質テスト、その他IPネットワークで音声を扱うための技術・情報が掲載されている。
第3部は、H.323、SIP、GCPなどのVoIPで使用されるIPシグナリングプロトコルの解説と、シスコ製のVSCによるこれらのプロトコルの制御が解説されている。
第4部ではVoIPの適用として、VoIP導入の課題や、企業VoIPのケーススタディー/サービスプロバイダーのケーススタディーを用いて、それぞれの場合の導入計画から、ルータの具体的な設定などの解説を行っている。
基本ガイドとしての位置付けであるため、VoIPの本格的な実装と設計に利用することは難しいが、VoIPの基本を学びとるためには、難易度もそう高くなく使いやすい本といえる。VoIPに携わる技術者の方で、IPあるいは音声の知識が足りないと感じられている方や、これからVoIPに携わる方は使われてみてはいかがだろうか。(斎藤牧人)