空の理解が私とは違うが。。。
★★★☆☆
空とは、存在の本質というものが無く全てがお互いに依存して成り立っているという事実を指す、というのが私の理解です。しかし桑田氏の言う空は「魂の世界」や「超存在」という言葉が使われていることからもわかるように、この世とは別の世界が「有る」という主張のように見受けられます。ご本人も、空の世界をこの世の価値観で描写することの危険性については自覚していますが、私には釈迦が語らなかったこと「無記」の態度を逸脱して抽象論に入り込んでしまったように思います。しかし、全てに実体がないという私の空の理解では、なぜ無や空を自覚した人間に慈悲の心が生まれるのかという謎、なぜニヒリズムに陥らないのかという謎は残ります。このように、著者の主張は受け入れられないものの、空について自分の理解と対比して考えることができたという点を評価して星3つです。仏教者であった弁護士遠藤誠氏のあとがきにも私と同じように、空の理解が違うと前置きした上で桑田氏の世界観に一定の評価を与えていました。