エコハウスでなくとも、新築される前に読むべき本
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『いい家が欲しい』など、エコハウスに関する本に興味があり読んでみた。 さすがに高給取りの施主である。 「費用の問題で・・・」と、実現しなかった仕様もいくつかあれど、1999年時点では最高レベルとも言える取り組みで、躯体のみならず内装・水周り・電化製品にいたるまでエコにこだわった家作りがされており、見学者が多数訪れたのも納得できる。
建てた後の反省点や改良点、水や排出二酸化炭素の計算、エコ仕様の経済性から、現在のエコ商品、果ては(仕事柄)環境税や政策にまで記述は及んでおり、エコ仕様を考えておらずに新築される方にとっても、参考になる本である。
まさに「隗より始めよ」
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地球温暖化対策の国際交渉担当者として、行政の最前線で活躍されていた同じ時期に、著者はフルコースのエコハウスを実現するため、建築業者、設計業者、地主さん、近隣住民の方々と地道な交渉を重ねていました。
エコハウスの建設は、土地利用や近隣住民との関係では、何の免罪符にもなりません。近所の方をこまめに回って挨拶をし、工事のお知らせをし、迷惑がかからないように措置しつつ、一つ一つ課題を潰していく。案外、仕事よりも大変かもしれません。現に、エコハウスの建設には、土地の分筆も含めると約三年間かかっているのです。
それで、省エネ投資による光熱費の節約で、何も付いていない普通の家と同等の建設維持費に追いつくのは、筆者の試算だと三十五年。正に、体を張った地球温暖化対策といえましょう。
本書は、エコハウス建設の顛末記だけではなく、その経験から得られた政策提言も若干示されています。著者の政策提言は、エコハウス建設の際に得られた、言わば【生きた経験】から得られたものであり、説得力があります。
今後家を建てる方に、是非参考にしていただきたい良書ですが、ここまでできる人は、そう多くはいないでしょう。
温暖化政策立案者による実践
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環境省大臣官房長の著者は,京都議定書が制定されたCOP3開催時には事務方として奔走していた.そんな,日本のマクロな温暖化対策政策立案の中心人物が,ミクロなご自宅(とは言えない立派なお宅ではあるが)の改築にて環境対策を実践した記録である.
その環境対策は,空気を熱媒とする太陽光利用床暖房,太陽光発電,雨水・中水利用,風力発電,壁面緑化,地下室冷気による冷房,透水舗装など,採用できうる全ての方法が盛り込まれていると言ってよい.太陽光発電など,効率の悪い北側の屋根を利用するなど,普通だと採用を見送るような場合でも積極的に導入しながら,実際に長期的には採算が取れるというところまで確認している.
単にエコを採用して満足するのではなく,経済的にも成り立つかという実験であり,その検証も綿密に行われている.更に特筆すべきは,著者の卓筆であろう.滑らかで,構成の巧さと共に,非常に読みやすい.
環境を重視した住い作りとはどういうものか,考える機会を与えてくれる.
「塊より始めよ」の実践本
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環境省の現職幹部が、ご自身のエコハウスの建築と居住を通じて得た経験や示唆を記した本である。最近、テレビも新聞も温暖化問題ばやりで、むしろ温暖化という言葉を目にしない日の方が少なくなっているが、国として○%減らす必要があるなどといった既に抽象的なマクロの議論をしている段階ではなく、具体的な対策を積み上げるミクロの議論をしなければならない。そんな状況の中で、市民一人一人が日々の生活の中でちょっと生活慣習を改善をすることでいったいどれくらい減らせるのか、ちょっと設備投資など努力すればいったいどうなのか(設備投資すると光熱費がどれだけ浮くのか)ということをきちんと示すことで、問題意識を掘り起こし、取り組みを促す努力をするのは国の重要な任務だと思う。本書は、役人の書いた文章とは思えない柔らかいタッチで書かれており、また内容がかなり現実的・具体的であり、自らエコハウスを造りたいと思わせてくれる(その前にそのための資金が必要だが)良書である。エコハウスを実際に建てたいと考えている人だけでなく、環境にちょっとでも関心のあるけれども具体的に何をしたらよいのかが分からない人の入門書としてもよいのではないか。