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海を渡ったモンゴロイド (講談社選書メチエ)

価格: ¥1,890
カテゴリ: 単行本(ソフトカバー)
ブランド: 講談社
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日本文化の起源にも示唆を与えてくれます ★★★★☆
日本列島が縄文時代、弥生時代だった頃、東南アジアからポリネシアに至る地域で、人々の営みに何が起きていたかを教えて下さいます。日本列島とその周辺との関わりを考える上で貴重な情報です。

この本は、弥生時代の始まりについて、従来の定説が崩れる前に出版されました。縄文時代の生産性の高さについて、まだ誤解があった頃です。日本語や農耕への影響について述べられた部分は、たぶん見直しが必要だと推察し、星を一つ減らしました。

大航海時代の西洋人から現代の私達まで、大海原を渡るには、天文学や地理学の成果、精密な時計や計測装置は不可欠です。これが無ければ、位置を見失い遭難漂流するしかありません。このような知識も技術も無かった時代に、大海原を自在に渡るなど夢のようですが、驚くべき知恵と鋭敏な感覚を頼りに、見事にやってのけていたのです。それまでの常識をつくがえしながら、太平洋地域の考古学の探求が進んできた事を紹介されています。

著者が「海人」と呼ぶ人々の源郷を、考古学や神話・民話の分布、遺伝子研究など多様な学問の成果を統合しながら、解釈していくあたりは、感銘を受けました。台湾先住民女性に由来する遺伝子がポリネシアまで広がっている事。ところが、ミクロネシアにもポリネシアにも、台湾先住民男性に由来する遺伝子は見つからず、この3地域の男性遺伝子が東南アジアに存在している事を紹介されています。

海人男性の源郷であり、造船・航海技術が発達した場所は、東南アジアにあるが、この海人男性と航海を共にした女性は、台湾先住民の女性だったと言いたいのでしょう。想像ですが、台湾女性が海人男性と結ばれた時、縄文土器が既に台湾にも渡り、独自様式を発達させていたと思います。ポリネシアまで広がるラピタ土器の先祖は、縄文土器なのかもしれません。

人類がアフリカ大陸を出発し、ユーラシア大陸に入り始めた直後の古い人類であるオーストラリアのアボリジニと日本人との深い関係にも触れ、氷河期に現れていた海岸線伝いに、日本列島にやってきて、私達の一番古い祖先になっている事を推察させて下さいます。その後に、樺太や朝鮮半島を経由したり、海人が到来して重層的な文化が醸し出されたのかもしれません。
点と点がつながっていく ★★★★☆
南の島に住む人々が,レーダーも人工衛星もない時代に,どのように島から島へ拡がっていったのか。考えてみれば不思議な話である。
いろんな証拠に基づいて,太平洋の島々を人が移動した経路が推定されている。途方もなくスケールの大きい話だが,いろいろ突き詰めることで点と点がつながっていく。最終的には,日本人の成り立ちについても考察している。
内容は文系的なものから理系的なものに渡り(ほとんど文系的),理学的な本に慣れた身であるからか,やや掴みきれない気がしたが,中身が盛り沢山で読みごたえのある本である。
ハワイ、タヒチ、グアム島、ニュージーランドなどへ旅する人に ★★★★★
ハワイをはじめとする太平洋の島々へ旅する日本人は多い。そして、海の色、珊瑚礁とそこの魚の珍しさ、異国の花や鳥の美しさに感嘆の声を挙げ、非日常の時の流れに生き返る思いを抱いて帰ってくる。しかし、そこに住む人々の来し方や日本人との関係に思いを馳せる機会はさほど多くないと思う。

この本で著者は、東南アジアから太平洋にかけての民が、いつの時代にどこから、どのようにたどり着き、現在に至っているかを語ってくれる。現地で片側にフロートのついたカヌーを見かけるが、それらカヌーがどのように開発され、この広い海原をどのように移動したかなども紹介してくれる。この地域から日本に来る力士やラグビー選手の大きな体格がどのように獲得されたかなども解き明かされる。日本人との関係も触れられる。海人という概念も面白い。太平洋の海人が余所から来たとしても、実は今あるその場で形成されたのだ、という指摘は目からウロコ。それらを、人類学や考古学、言語学の成果や神話、遺伝子情報などを駆使して解き明かしてくれている。

目の前に新しい世界が拡がり、太平洋とそこに住む人々がグッと身近になる所説の山である。

この本と別に、太平洋地域を歴史学など社会科学的視点から明かしてくれる本として増田 義郎 (著)「太平洋-開かれた海の歴史」(集英社新書)がある。両書を読めば、太平洋学概論の講義を受けたことになり、この地域の旅がいっそう奥深いものとなることうけあい。