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北一輝論 (講談社学術文庫)

価格: ¥1,208
カテゴリ: 文庫
ブランド: 講談社
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知らなかった北一輝 ★★★★★
 北一輝という名前は 最近読む機会があった大川周明関係でよく聞いたので 今回本書を読む機会を得た。

 226事件の精神的主導者と聞いていた北一輝である。但し それで片づけられて来ただけだったということを本書を通じて痛感した。
 これは歴史教育にも問題があると思うが 中学ー高校の日本史で 明治以降の歴史を扱う時間と 何より熱意が欠けているような気がする。勿論 縄文土器や藤原時代は大切なのだと思うが 今 この時代に繋がる「歴史」とは そのかなりの部分が明治維新以降ではないかと思う。その割には その部分を教えようという雰囲気が余りにないのではと思う。
 この北一輝も その一つの例だ。せいぜい「右翼の理論家」程度の認識しか持っていなかった僕としては 北が天皇機関説の彼方に 新しい時代を見ていたことは全く知らなかった。その点を今回知っただけでも 実りある読書になったと思う。

 本書で描かれる北一輝は 著者の思い入れというフィルターを通して見える姿であり それが正しいかどうかの判断材料は 今の僕にはない。但し これで非常に北という方には興味を覚えた。大川周明でも同じことを思うのだが 今までに貼られてきたレッテルは 一度剥がして その下に何があるのかを確かめるべきだ。北一輝に関しても 誠にそう思った次第だ。
再評価があっていい ★★★★★
革命は左翼、ナショナリズムは右翼と対立軸を引き易いが北一輝は線引きなどしない、天皇を利用し社会主義革命を執行しようとする。ロマンに酔い恋慕し放浪し革命家の道に、、、。評伝として松本健一著評伝北一輝があるが全5冊はちょっと高いと言う方に。三島由紀夫がなぜ226事件の将校を肯定し昭和天皇に失望したか考察するためにもお薦めします。
若き岸信介に最も影響を与えた人物 ★★★★★
東条内閣、商工大臣、戦後首相を勤める岸信介に最大の影響を与えた思想家。彼は回顧録に北一輝にあった時その隻眼に凝視されその革命的カリスマ的大きさに震えたと記す。国賊とみなされ発禁処分になった日本改造法案大綱を入手し全文を筆記し北からの思想的影響が彼の人生を決する事となる。革新官僚時代労組を結成して賃下げ反対。日産を育て、商工次官の時に資本家制限をして半社会主義的な政策を打ち出し資本家代表の小林一三と対立辞任。東条内閣で商工大臣になるも東条打倒。この時の同志は戦後自民党から社会党に広がり社会党入党打診の元となる。自主憲法、再軍備、西ドイツ型二大政党の運動を起こすも挫折。巣鴨プリズンの日記で誰よりアメリカを憎みつつ首相の時日米安保改定に倒れる。元来やりたかった福祉を弟子の福田赳夫にやらせ福祉元年を築く。晩年まで国体という事にはこだわるが私有財産にはこだわらないと言う。かの安部晋三の祖父。全く祖父に及ばぬ祖父が生きていたら今の安部を見て叱り付けたろう。
彼の洞察力と昭和天皇及び側近の罪 ★★★★★
彼は伊藤らが人工的に作った皇国なるものの本質をいち早く見抜き戦後も残る岸信介ら官僚体制の中で戦後繁栄の雛形を描き戦前に勝る戦後の日本の繁栄の基本思想を作った人物とも言われる。彼の同志であった安岡正篤は終戦の詔勅、平成の元号を作り、吉田茂、佐藤栄作、大平正芳ら歴代総理の指南役とも言われるが。当時政友会は三井の民政党は三菱の代理人と呼ばれ代議士は大地主しかなれない現状があった。小作人の子で優秀な者は無料で有給の軍の学校にいくしか出世の道は閉ざされていた。彼らは将校となる者も多かったが当時日本一の金持ちであった天皇そして取り巻きの重臣それと結びついた財閥や恐慌の中貧しい農村で
代議士を出す地主に搾取され自らの姉妹や親族の女子が貧しさゆえ身売りしていくのを黙ってみているしかない有様だった。ただ天皇神話を信じた将校(なぜか2.26事件に某宮様と出てくるが北の国家改造法案大綱を実現しようとした皇道派軍人に近かったのがやはり軍人で昭和天皇と仲の悪かった弟の秩父宮なので丁度フランス革命派に援助したのがルイ16世の従兄弟で王位を伺っていたオルレアン公であったのと同じように皇位を伺ったとする説もある。おそらく間違いないだろうが皇室タブーがありあまり言える事でもない。)に天皇大権による莫大な皇室財産の国民への下賜、華族制度廃止、貴族院廃止、治安警察条例、新聞紙条例廃止による自由、財閥解体、農地解放、福利厚生という戦後の先駆けとも言える案は魅力的であった。さらにアジア唯一の強国日本による白人支配からのアジア解放とアジア共同体的構想は古びていない。北の法案を奉じた将校は2.26事件で決起するが既得権益の中心に天皇が存在する事も知らず自らが憎んだ既得権益者をクーデターで殺害した事が昭和天皇の逆鱗に触れる。北はクーデターには消極的だった事も記されている。当時北は法華経三昧の僧侶のようになっていた事も記される。彼は典型的ファシストである。明確にそれは言える。しかし彼のようなパーソナリティなくして戦後日本の繁栄はありえなかったのも確か。ただ2.26の時には股肱の臣を殺した青年将校が許せぬと言いつつ戦後昭和天皇は自らの股肱の臣を切り捨ててアメリカのマッカーサーと共謀して天皇家生き残りを謀る。かくして米属国日本が出来上がるのである。礼儀正しかった日本人の風紀紊乱というがアメリカ映画や音楽の風俗、ガムをかみながらホームランを飛ばす大リーガー、ファーストフードやアメリカンライフスタイルが入ってきてそれが国際化で加速しているだけだと思うが。もし2.26が成功していたら日本は変わってたかもしれない。ただ最早北は過去の人になっていたが。2.26の青年将校であったご老人が18年前今の日本は自分達の目ざしたものだおっしゃられていたのを付記する。それだけ時代を先取りしていた人物である。唯一者というパーソナリティは物事の先駆者や天才には常に付いてまわるもので珍しいわけではない
つかみどころのない男だが… ★★★★★
 社会主義者として出発しながら、右翼、青年将校と深く関わるようになった北一輝。彼は初期の思想を捨てたように見えるが、後年の『日本改造法案大綱』からも社会主義者としての考えは失われていない。そのために北一輝は極めて複雑な思想の持ち主として現れ、彼に迫ろうとする者を困惑させる。その彼に「ロマン主義者」という見事な評価を与えたのが、本書である。徹底した個人主義者として強大な権力を持つ天皇に嫉妬し、その天皇に取って代わって権力を握ろうとした結果が二・二六事件なのだと言う著者の指摘は、彼の矛盾するかのような生涯をうまく表現していると言える。抽象的だとの非難はあろうが、大川周明に「魔王」と言わしめた彼の評価にこれより適切な言葉は浮かばない。
 処女作『国体論及び純正社会主義』の発禁処分を受け、暗殺へとひた走ろうとする可能性に気づき、一度は革命への夢をあきらめる。しかし、辛亥革命へ関わる中であきらめかけた革命への夢に目覚め、日本に帰国する。そしてクーデターという形での革命の実現に向けて動き出す。こうした心理過程を解き明かした本書は、実に読み応えのあるものである。
 ただ、本書における「超国家主義」は、丸山真男流の超国家主義(極端な国家主義)ではなく、橋川文三流の超国家主義(EUの構想に見られるようなもの)なので、読み間違えないように注意して頂きたい。