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蹴りたい背中 (河出文庫)

価格: ¥399
カテゴリ: 文庫
ブランド: 河出書房新社
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 『インストール』で文藝賞を受賞した綿矢りさの受賞後第1作となる『蹴りたい背中』は、前作同様、思春期の女の子が日常の中で感受する「世界」への違和感を、主人公の内面に沿った一人称の視点で描き出した高校生小説である。

   長谷川初実(ハツ)は、陸上部に所属する高校1年生。気の合う者同士でグループを作りお互いに馴染もうとするクラスメートたちに、初実は溶け込むことができないでいた。そんな彼女が、同じくクラスの余り者である、にな川と出会う。彼は、自分が読んでいるファッション雑誌のモデルに、初実が会ったことがあるという話に強い関心を寄せる。にな川の自宅で、初実は中学校時代に奇妙な出会いをした女性がオリチャンという人気モデルであることを知る。にな川はオリチャンにまつわる情報を収集する熱狂的なオリチャンファンであった。

    物語の冒頭部分を読んだだけで、読者は期待を裏切らない作品であることを予感するだろう。特に最初の7行がすばらしい。ぜひ声に出して読んでいただきたい。この作家に生来的に備わったシーン接続の巧みさや、魅力的な登場人物の設定に注目させられる作品でもある。高校1年生の女の子の、連帯とも友情とも好意ともつかない感情を、気になる男子の「もの哀しく丸まった、無防備な背中を蹴りたい」思いへと集約させていく感情と行動の描写も見事だ。現在19歳の作者でなければ書くことができない独自の世界が表現されている。 (榎本正樹)

私は好きですね ★★★★☆
初めて読んだのは中学生の時で、その時は「?」って感じでした。
だけど作者がこの作品を手掛けたのと同じ歳になった今、あの時解らなかった何かがわかる気がして読み返してみました。

主人公のハツは複雑で欝陶しい人間関係を築くことを放棄した女子高生。一人でいるのは嫌いだけど、グループでいるのはもっと嫌な彼女は、ゆっくり老化していく自分をリアルに想像しながら毎日を過ごしていた。
そんなある日、理科のグループ分けで自分と同じようにクラスで浮いているにな川を見つける。
そして過去にハツが偶然出会ったモデルをきっかけに、にな川とハツは親密になってゆくのだが……

まぁ、あらすじはこんなかんじです。
なんてゆーか、共感、みたいなものは多少あった。感情の比喩もとても上手いし、品がある。
でも起承転結に欠けるからドキドキとかはなかったですね。でもそのけだるい、後に何も残らない感じが、主人公ハツの性格を現してるみたいで、私的にはよかったです。
特に、(文章に直接書かれてるわけじゃないけど)ハツがにな川を見下してる感じがリアルにじとじとしてて、うわっ、て思った。
自分と同じ様に浮いたにな川。ひとりがひとりに共感を求めて寄り添えば、少しは楽になれる。でもそんな同調性を仮面に、ハツの心の水面下には、にな川への無意識の軽蔑があったに違いない。
オタク、根暗、きっと自分の方が絶対まし。私には「まだ」絹代がいるから、と。
だけど、にな川は違った。毎日人の視線や好きで一人で居るの、のスタンスばかり気にしているハツとは違って、彼の興味はまるでこっちにはなかった。
同じようで、まるで違う。
もしかしたら、ダメでキモくて、うざったいのは、自分かもしれないと、きっとハツは思ったに違いない。
そんな焦りとか、嫌悪感とか、自分と似てるようで似ていないにな川に対するいろんな感情の摩擦が、愛しいよりも、いじめたいよりも、もっと乱暴で非道な衝動、背中を蹴ってやりたい、ってなったんじゃないかな。
なんかそんな理不尽な想い、すごい共感できんじゃんとか思ってしまいました。
また何度か読もうと思います(^^)
若者の手によるジュブナイル小説としては悪くないと思うが……。 ★★★☆☆
若者の手によるジュブナイル小説としては悪くないと思うが、
芥川龍之介賞を受賞するに値するとは、私には思えなかった。

「学校のクラスのあぶれ者同士の連帯と同族嫌悪」というテーマは目新しいモノではないし、
更にそのテーマの描き出し方にも特別新しいモノは感じられなかった。
作者の言語感覚も決して悪いモノではないと思うが、内容が軽い。
強いて美点を挙げるなら、冒頭のオオカナダモの情景であろうか。あの描写には多少なりとも個性があった。
この頃の綿矢りさは輝いていた ★★★★☆
学生時代、心を開いて同級生と打ち解けることが出来ず、
大なり小なり、どこか冷めた目で傍から観察していたような人、
日陰で青春を送った人に支持を受けているように思います。

周りから受け入れてもらえず心が「痛い」、
ちょうどいい言葉が見つからず「もどかしい」、
同じようなクラスの余り者が、まるで自分を見てるみたいで胸が「痛い」、
でも親しい人への痛みの伝え方も、自己防衛の方法も分からない。
答えは「子どもだから」。

そういう思春期ならではのヒリヒリした痛みが伝わってきて、
そこに共感できた人はこの作品に大賛成している。

そのまま行くと陰気な小説になっただろうから、
ちょっと「にな川との恋愛もまんざらでは無い感じ」にして甘酸っぱく終わるかんじ、
それは成功だったと思う。

自意識過剰の余り者どうしがくっつくことは絶対無いと思うけど




さすが、今の若者の小説 ★★★★★
綿谷りささんが最年少で芥川賞を受賞した作品です。
もう、これだけで読む価値はありますが簡単に感想等書きます。

まず、これは普通の恋愛小説や青春小説ではないです。あまり書くと読む面白みがなくなるので書きませんが、一人ぼっちと一人ぼっちが出会いその中でどんな感情を手に入れていくか、という物語です。
そして、描写がとても若いです。新しいともいえます。とても生き生きしていて、読者の感覚も研ぎ澄まされていくようです。ただ、その新しさ故、他の文学作品に比べ軽く思われるかもしれません。ただ読みやすいのも事実なのでライトノベルなど好きな方はこちらから文学作品に触れていくのもいいかもしれません。

若者二人を瑞々しく描いた作品です。二人はとても可愛くて若者特有の危うさを抱えています。意地っ張りだったり、遠くのものを見つめていたり…
そんな二人はきっと皆さんも可愛く映ると思います。
文学作品としては○ エンターテイメントとしては…… ★★★☆☆
リアルな女子高生象に的を得ている作品。
それも、孤立した女子高生の心情が非常によく現れている。
ただ、読み方によっては理解されない作品であることも確かだ。


タイトルにもしたように、文芸作品としては非常に勉強になる作品だろう。
書くのが甘いというのではなく、この作品の優れた点は
小説の形式美を打破し、新たな形式を作り出すその芸術性を孕んだ点にある。
変わった作品、しかし、心情はよく描かれているし、小説の「承」である
言い回しの巧みさが見て取れ、今後が大いに楽しみな作者である、


しかし、物語を起承転結で表すならば、感情曲線が平坦な作品だといえる。
良いところ中の上キープで、おもしろいが際立って面白くもない。
そして、つまらなくもない。形式美にはまってないからこそ、
書ける作品ではあるが、エンターテイメントとしては評価は☆☆☆だろう。
ただ、文芸作品としては間違いなく☆☆☆☆☆。
物語の視野は狭いが、女子高生の心情では蹴りたくなる背中というタイトルを
表現するために一冊書き上げた作者の書き力に目を見張る。



小説は自由であるからどちらの好みもあるため、万人に好評価は得られないだろうが、
個人的には物語にもっと抑揚のついた作品であればもっと楽しめたと私は思う。