親知らずの小鳥はどこまでも飛んでゆく
★★★★☆
「親知らずの小鳥」は、作中の少年少女のみならず、一部の読者をも象徴している。
それは、既存の概念に異を唱えるもの――戦争や国境や序列に価値を見出さない世代。
正直、「戦争を終わらせる程の宝」の言葉で、宝の正体の予想がついてしまったのが惜しい。
だがそれでも、序章の美しさが損なわれる訳ではない。
しかし美しいものは、美しさに打たれる心なしには、存続が難しい。
この“宝”は、この先どれくらい無傷でいられるだろうか。
現実には、世界中の宝が、様々な理由で消え去っていく。例えば大戦消滅後の内戦や紛争などで。
“敵”より上にいたい――戦争や差別を生み出す根源となる欲求。
それを否定した…否定したい作者が、愚直なまでに素直に書き上げ、差し出した作品。
目新しさはなくとも、清々しい。ぜひ十代に読んでほしい。
残念だったのは、表紙である。いや、絵は可愛らしいのだが…設定は16〜17歳のはず。
私は友人が貸してくれたから読んだが、書店では絶対に手に取らなかったろうと思う。
大変申し訳ないが、タイトルも災いして「幼女が好きな人向け」に見えてしまう。
モノローグを極力排する文章は簡潔で、好感が持てる。
ライトノベルではなく、児童文学として発表されていたら、かなり評価が高かったのでは。
第一次大戦の頃の異世界
★★★★☆
第一次大戦の頃の欧州に似た異世界を舞台として物語です。
主人公はアリソンとヴィルという少女と少年。
典型的なボーイミツーガールの冒険譚です。
この世界は一つだけの大陸で、ルトニ河と呼ばれる大河を挟んで対立する二つの陣営の戦いが続いています。
東側のロクシアーヌク連邦と西側のベゼル・イルトア王国連合
この両陣営の長きに渡る戦争の中でのつかの間の平和、小康状態を保っている。
アリソンとヴェルは、ロクシアーヌク連邦側の人間です。
彼らが一人の老人の語った宝の話から冒険の旅に出る事になります。
アリソンは空軍のパイロットであるとの設定です。
戦闘機と言っても複葉機に乗って彼女は戦います。
ヴェルはそんなアリソンに付き合うように一緒に冒険をする
そんな感じで物語は進んでいきますね。
国際謀略モノと言いたいとこだが、政治云々は、二人の旅に添える小道具みたいなもので
基本的にアリソンとヴェルの冒険が主の物語と思ってください
空軍パイロットの少女
★★★★☆
大陸が一つしかない世界。その大陸が山脈と川を境にして東西に分かれて冷戦状態になっている。
大陸の東のロクシアーヌク連邦に住む十七歳の少年と少女が主人公の冒険物語。
ロウ・スネイアム記念上級学校のヴィルヘルム・シュルツは、帰る家がないため夏休みを学校で過ごしていた。
そこに空軍の飛行機で舞い降り、生徒や教師が驚いて見守る中校庭に降り立ってたのは、戦争孤児院『未来の家』でヴィルといっしょに育った
「空軍の兵士」アリソンだった。
二人が知り合った「ほら吹き爺さん」が誘拐され飛行機で連れ去られたため、それを飛行機で追いかけて川を越え冷戦状態の西側に渡ってしまい……。
飛行機がプロペラの軍用機だったり、サイドカーのバイクが重要な交通手段だったりと、『古きよき時代』の匂いのする文化の設定に、若い女性が空軍パイロットとしてあたりまえに勤務している近未来的な職場環境の世界が新鮮です。
主人公二人が、西の国の人たちに対して「憎しみや敵意をもっていない」ため、その行動や言動が明るく裏がなく、サラサラと読める楽しい本でした。
戦争の記憶や長い間の対立、それでも「和平」も望む人々の気持ちがお話のそこここにちりばめられていて、物語に深みを与えてくれています。
アニメ放送開始
★★★★☆
アニメ放送開始された6年前の作品。少年少女の冒険活劇とありふれた設定ながら主要キャラが立っていて、それなりに展開がスムーズで読みやすかった。また戦闘機や戦闘シーン等も単純すぎず、マニアックすぎずそれほど気にならずに馴染んでいたのも良かった。挿し絵がもう少し萌えてなければ良かったかなと思う。
空想の世界へ…
★★★★★
私はこの作者の別の作品である「キノの旅」で初めて時雨沢恵一さんの世界に触れました。
その後なぜかしばらく本屋さんで隣に並ぶ「アリソン」には手を出さずにいた私でしたが、最近ふと思い立ち「アリソン」を読んでみて、どうしてもっと早く読まなかったんだ、ってすごく後悔しました。
「キノの旅」の少し暗くてリアル(?)な描写に比べると、「アリソン」は軽くてファンタジー性も大幅アップという感じで、引き込まれるような世界観とその描写は、今を時めくライトノベル作家さんたちの中でも特に素晴らしく、御一読の価値があると私は思います。
現実世界のいろいろにちょっと飽き飽きした貴方も是非、このファンタジーの世界に足を踏み入れてみませんか?