ニーチェが嫌いな編纂者
★★★★☆
冒頭に儒教、道教、仏教、インド哲学等、東洋哲学を配し、
その後、古代から始まって、ソクラテス、プラトン、スコラ哲学、デカルトの合理主義
ホッブス、ロック、ヒュームの経験主義、カント、ヘーゲル、
そしてひときわ異彩を放つニーチェから現代へ年代を追って、見開き2ページを
基本に園哲学を説明解説する。1ページ分は図解だが、この図解がちょっとくせ者。
理解を助けるところもあるが、理解を混乱させるものもあり、さらに必要性のあまり感じられない無理やり入れた添え物イラストの時もある。
その比率は僕の感じでは 1:1:1である。
レベルはでは入門編ではなく、大学生の哲学好きレベル。
さらに、事典でありながら(原題ではAtlas)著者たちはどうやらそれぞれの哲学者に対して好き嫌いが有り、
その感情を隠さず表記しているところがおもしろい。(日本の事典だったら許されないよなあ)
たとえばニーチェ。ニーチェが好きな人は皮肉屋天邪鬼偽悪家道化者邪道好と相場が決まっているが、
編纂者は皮肉屋天邪鬼偽悪家道化者邪道好ではないようだ。
なぜならニーチェが嫌いなことがありありと分かるからである。
「ニーチェは一連のもったいぶった著作(中略)『アンチクリスト」ではキリスト教に対し怒りをぶつけている。
『この人を見よ』では彼の自信過剰が率直に現れている。彼は回顧しつつ”なぜ私はこんなにも賢いのか”、
”なぜ私はこんなに優れた本を書くのか”等々と叙述している。ここから誇大妄想が増殖し、
ついには1989年の卒倒のあと、精神錯乱に陥ったのであった」