シオランの入門書
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シオランの著書としては、彼の「生誕とは、一つの災厄である」という告白からも分かる通り、最も明快な反哲学的著書。シオランの著書の多くはアフォリズムで書かれている為、非常に読みやすいが、猛毒性では、世界一かもしれない。そこら辺にある毒舌が裸足で逃げ出すであろう、「真実」に近い透徹した視線がある。ビジネスで成功を邁進している若者が彼の著書で会社を辞め、放浪の旅に出るであろうし、自殺志願者がこの世への怒りから現実に回避するという、人生の視点が遅かれ早かれ「必ず」180度変化することが保証できる本。とにかくシオランという人はどの著書でも同じことを語っているから、売り切れていたら別の著書を購入しても良い。しかし、彼の思想の根幹が最も分かる著書として是非読んで欲しいし、現代の病根が、実は「生きる」ことの肯定を強制する暴力=権力なのだと気づかせてくれる。学校制度はこのことを真摯に受け止めるべきである。シオランは夜、頭が冴えてわたって眠れない時に読むと特に有効で、なぜか彼の考えが良く理解できる。
生きることに対する真摯な苦悩
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シオランは人間の「悪」から決して逃げない。彼は希望という「嘘」ではなく絶望に叩き込む。だがそれが「真実」に近いがゆえに立ち上がることができる。そう、生まれてきたという憤怒によって。シオランは、人間というもの、ましてや「言葉」なぞ信じてはいない。しかし、私も最近気がついてきたが、彼は人間を捨てきれない底の底に「優しさ」がある。これは表層しか理解しようとしない人間には、何年たっても理解はできないであろうが、文の背後にあるシオランが見えてくることがある。激烈なアフォリズムはぺらぺらのきれいごとをふっとばし、そこらにある世界が全く違ったものに見えてくる。
最高作
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アフォリズム集。意識の呪い、タイトルどおりの書。シオランはルーマニア生まれ。パリで没す。言葉を失う絶望と病の呪詛の連続。