最小の世界
★★★★☆
「椅子」は人間の「個」の存在を明らかにする、最も小さな「単位」なのだろう。
だから人は
箪笥でもなく
机でもなく
本棚でもなく
とりわけ「椅子」という家具に、ある種の思い入れを見せるのではないか
本書ではたとえばアアルトのような建築家を取り上げ、建築家が最小の「居場所」として「椅子」によせる気概を見事に描いている。
ただ建築がたとえばオートクチュールであるとすれば、椅子はプレタポルテである。合理的に大量生産が可能で、かつ耐久性がなければならない。
本書ではそういった面からも、家具づくりにおける「匠」、それを支える「工場システム」についても綿密な取材をもとにした紹介がなされ、改めてマニュファクチュアリングの重要性ということを気づかされた。
様々な椅子の資料写真はとても見がいがあって美しいのだが、その配列が本文と合致していないので(ナンバリングはもちろん打ってあるのだけれど)ちょっと読みにくいのが難。
名作椅子が生まれた背景を掘り下げて・・・
★★★★★
椅子研究といえばまずこの人の名が挙がる第一人者、島崎信氏の著書です。
名作といわれる椅子について、デザイナーがどのような思想を以ってそれを生み出したの
か、そして生まれたデザインを製品へと作り上げる製作会社との信頼関係や環境、背景
までを掘り下げて、名作椅子が完成するまでの経緯を紹介するのがこの本のテーマです。
その内容は美大教授らしく詳細でありながら的確。本書の帯の宣伝文には「ロングセラー、
ベストセラーには理由がある。」とありますが、まさにその椅子がロングセラーとなり得た理
由を "講義" してくれているようです。
書中ところどころに現れる当時のカタログやパンフレットの写真も資料としての価値は大き
いと思います。
作品だけでない、その椅子が生まれた背景がよくわかる
★★★★☆
椅子の作品集というより、家具デザイナーたちの生き様や考え方、支えた周囲の環境など、とても深い内容になっており、有名な椅子たちが誕生した歴史を1ページずつ読み進めながらひもといていく感じの本です。