自分のペースでつかみとった18世名人位
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18世名人となった森内さんが、生い立ちから将棋との出会い、奨励会時代、挫折と逆襲を経て名人のタイトルを獲得されるまでの半生を描いた本である。
将棋の世界ではなんといっても羽生さんが世間の注目を一番集めているが、森内さんの生き方や人生観にはとても共感できる部分がとても多く、将棋を知らない方でも得るものは多い内容ではないかと思う。
本書から感じられる森内さんの人柄で一番印象にのこるのは「自分のペースで努力をすることの大切さ」ではないだろうか。森内さんは羽生さんとともに奨励会に入会した同期の仲間。
だか羽生さんは7冠を獲得するなど、タイトルをどんどん獲得していく一方、
森内さんはノンタイトルの日々が続く。本書ではその時期に感じていた焦りや挫折感を赤裸々に語る一方で、結婚を機会に「そんなに気持ちを張り詰めて生きていかなくてもいいんじゃないかな」と思えるようになり、将棋に対しても余裕が生まれてきた、と語っている。
とにかくせわしない、忙しい現代にあって、我われはできるだけ最短で、手っ取り早く夢や目標を実現させようと考えがちになってしまう。そんな生き方に疲れてしまったり、疑問を感じている人も少なくはないと思う。
本書では一日に一ミリでも一センチでもこつこつと努力を積み重ねていく18世名人の愚直で人間味くさい姿が描写されている本である。