読みやすく手頃な価格帯で、専門的に聖書を研究しよう等という用途でもない限り、十分に役立つ。読み物としても独立した面白さを持っているのも、このシリーズの特徴だ。

とりたてて「これが良いです」とお勧めするつもりはないが、聖書を初めて読む人は（或いは二度目であっても）、この手の人物辞典を手元に置いておくと便利かもしれない。
なにせ聖書というは、読み手の「読みやすさ」などさほど考慮していない書物である。人物の名前が被ろうが年代が前後しようが前の章と矛盾があろうがお構いなしだ。それでも少しは気を使っているつもりなのか、同じ名前の人が登場する時は「●●（地名）のヨハネ」などと区別を計っていたりもするのだが、その程度の気遣いでどうにかなるレベルかというのが正直な所で、オマケに登場人物のキャラを立てよう等という気もなく（主要な人物にはその手の配慮もある気がする）、登場人物が多すぎる等という配慮もなく、とにかくワサワサと色々な人が出ては消えていく。それでなくても日本人には馴染みのないカタカナ名が氾濫しているわけで、読んでいるうちに誰が誰だか分からなくなる、というのはよくあることだ。自分で人名録を造りながら読めるならそれが一番かもしれないが、聖書本体を読むだけでも「世界中のキリスト教徒は本当にこれを読んでいるのか」と問いつめたい気分になる人は多いと思われるので、根気と自分の読書能力に自信がない人は、この手の本の世話になった方が余計なストレスを感じないで済む。
同類の解説書は数多く出版されているので、他書のレビューなども見比べて自分にあった一冊を見つけるのをお薦めする。