5作目
★★★★☆
本作品はゴダードの5作目、1991年の原著発表作である。「千尋の闇」で衝撃デビューを果たし、「リオノーラの肖像」「闇に浮かぶ絵」「蒼穹の彼方へ」と、個人的には、ここまでは非常におもしろい作品であったと思う。しかしながら2000年の「今ふたたびの海」など、やや趣向を変えた近年のゴダードの評判は決していいものであるとは言えない。さて、どちらかと言えば初期作に分類される本作はと言うと、これまでのゴダード作品から、やや趣を変えつつある時期のものではないかと思われる。まず、プロットがこれまでのように複雑すぎない事があげられる。ゴダードと言えばプロットの複雑さがあげられるが、それ故に、ストーリーにやや破綻が見られるものが少なくないように思える(「千尋の闇」は本格なので除くとして)。しかしながら、本作品はストーリー自体は、ゴダードにしてはあっさりしている。過去にも現在にも、わなに次ぐわなに主人公がはまっていくわけだが、上巻では導入部分が約半分を占めるので、読んでいて引き込まれていくのは中盤からになると思われるが、引き込まれはじめると、一気に上巻は読み進んでしまうことは間違いない。いきなり複雑なプロットに抵抗がある人でも楽しめる作品であるので、ゴダード作品の中で最初に読むのには適しているかもしれない。
ヒロインの魅力で引っ張る
★★★★☆
ゴダードの中では異色の部類であろう。ミステリーの観点から言えばそれほど手が込んでいない。過去に犯した過ちを取り返す主人公(男)というパターンに属する。他の作品では最近の「永遠に去りぬ」がそう。本書では、非常に魅力的なヒロインと駆け落ちの約束をしながら、ビジネス上の利益を選んでしまった主人公が描かれる。だが、真の主役は美貌のヒロインと彼との熱情的なロマンティック・ミステリーというところにあろう。
感動の秀作!
★★★★★
海外文学では必読作者さん、と言えるロバート・ゴダード。その中でも僕が最初に読んでみたのがこれ。めくるめく展開と、飽きのこない描写が読み手を一気にラストまで進ませます。海外ものはちょっと…という方に是非読んで頂きたいです。訳も秀逸、よくぞここまで、という一品。ラストの悲しい幕切れに必ずや感動し、他の作品も…と、はまること請け合いです。