まず作品ですが、本書では有名作はもちろんのこと、さほど有名ではないがシャガールの素晴らしい色彩とフォルムと詩情に満ちた重要作がふんだんに紹介されてます。油絵のみならず、彼の取り組んだペン画、パステル画、ステンドグラス、陶芸、彫刻、そして詩も紹介されてます。どれも非常に魅力的なので、「もっと見たいよ」と欲を言いたくなる程の充実振りです。
本書では高階秀爾氏の序文の後にシャガールがオペラ座の天井画を描く過程を写真で9Pにわたって紹介されています。本書の見所の1つ。そして「知の再発見」シリーズの各本の構成ではお馴染みの資料篇では、シャガール最愛の妻ベラの伝記的著作からの抜粋(特に名作「誕生日」のエピソードは感動的)、そして彼自身の「わが生涯」や記述、インタヴューからの1部も掲載されています。彼の人柄を知る上で貴重な資料です。そしてシュルレアリストのアラゴンやジャンレマリーといった人達による奥深いシャガール考察も重要で読み応えがあります。
絵を見るだけでも楽しく、そして文章を読むだけでも価値のある本書はシャガール初心者には特にお勧めです。本書を読んだ後、きっとシャガール関連の本をもっと見たくなるでしょう。