第1に、読みやすいことが挙げられます。後記によれば、本書は文学部の学生一般を対象としてなされた講義であり、その講義をノートを基礎に紙上に復元したものだそうです。実際、文全体の流れが良く、順序良く淡々と進んでいきます。初出の専門用語も説明してから進みます。
第2に、分量が224頁と少ないことです。一体哲学のどの程度の内容が網羅されているのか、初学者の私には分かりませんが、全体を俯瞰するための「概論」としては、厚すぎてはいけません。しかし、論述が簡潔すぎても理解できず逆効果です。本書は講義を再現しただけあって、その論述に飛躍や前提知識の省略が見られず、適当だと言えるでしょう。