『純粋理性批判』が出版された当時、それがあまりにもわかりにくいことからクレームがカントのところにきて、簡約版の『プロレゴメナ』を書くことになった。「プロレゴメナ」という言葉はギリシア語で「前もって言う、つまり序論」を意味する言葉で、カント自身はこの本だけで分かった気にならずに『純理』の方に進んでほしいと思っていた。しかし、哲学の研究者によっては本書で十分だという人もいる。たしかに専門で研究する人以外は1000ページ近くある『純理』を読むのは実際難しい。でも素通りするわけにはいかない。そういう人にはお勧めです。本書では『純理』に進まない人を気遣って、訳者による注解が豊富で、いちおう本書だけでカントの『批判』が分かるようになっている。
また『純理』に対する酷評の反論も収録されているので、研究者にとってもおすすめ。