この著者の姿勢はその意味で、大胆である一方、学に携わる人間の使命を自分の言葉でまっとうしようとしている点で好感がもてる。
これはある種「専門家」にとっては秘密に属する話かもしれないが、巻末に参考文献をずらずら並べ、専門家顔で議論することは、大学院まで終了した人間にとっては意外に楽な作業なのだ。誰もチェックなんてしないから。
むしろ難かしいのは、平易な文体で書き、多くの人の知性によるチェックを受けて耐えうる議論をすることなのではあるまいか。これは自らの知性に自信がないとできない作業だと思う。
日本で宗教について考察することは、それ自体で大変難しい作業である。その作業を果敢に引き受け一応、論じきったた本書に拍手。確かに西洋についての記述の方が多いのだけれど、門外漢の人にはむしろ勉強になってよいだろう。
内容以外に注文をつけるとすれば、値段の高さだ。専門書とはいえない性格上、よっぽどの本好きしか購入しないだろう。しかし、同じ平易な文体で書かれてベストセラーになった『バカの壁』よりはよっぽど為になるし、濃密な読書時間を楽しめる。
多くの人に親しまれるよう文庫になる日が待たれる。