著者の土橋寛氏によると、日本の古代信仰の最も中心的な課題は、霊魂(それも浮遊霊よりは、霊力、呪力)の観念だが、日本の学界ではこの種の観念についての知識が乏しく、また誤解もあるそうです。本書はファティシズム(呪物崇拝)、アニミズム、マナイズムといった原始宗教の視点から、日本語の分析を通じて、古代日本人の信仰の実情を明らかにしたものです。
氏は儀礼や言霊とも密接なつながりがある古代歌謡の研究家として著名です。その氏が霊力・呪力と関係のある日本語や、神名、神社名などを解説してくれる目から鱗の1冊。神道研究のみならず、神話研究、日本語研究としても読むことが出来ます。90年4月の初版から長く読みつがれている著作(手元にあるものは2000年5月20日の第8版)、ぜひ御一読を。