内容の統一感に欠けている
★★☆☆☆
形の上では「戦略管理会計の領域を構成する論点である」という串によって各々の章がつながりを持たされてはいるものの、概論的でオーソドックスな議論に終始する章からマニアックな学説の変遷を扱う章までが無秩序に並べたてられており、全体としての論理に有機的な結びつきは感じられない。執筆者が多いことで本書全体を通して読者に訴求すべきポイントを詰めきることができなかったのだろうか?同じ意図を共有し作業を分担して本をまとめたというよりは個々の執筆者がテーマに沿って「(言葉は悪いが)勝手気ままに」論じたような印象を受ける。
対象読者が誰なのかも分かりづらい。管理会計に関して相応の事前知識を持った読者であれば内容は理解できるが、この内容が理解できる読者にとっては単なる知識の再確認に終わり特に目新しい知見は得られないだろう。逆にそういう読者以外は、首を傾げながら字面を追いかけたうえ結局最後まで中身を咀嚼できぬまま読了するだろう。
編者を始め執筆者たちはビジネスの現場とアカデミックの世界を知悉する一級の研究者たちであり、内容の正確さや洞察の鋭敏さにかけては非の打ちどころがない。
ただ少々、読み手への意識が足りないと感じられた点が残念であった。