羽生名人と比べて実践的
★★★★☆
将棋はやるもののプロレベルの考え方はさっぱりわかりません。とにかく羽生名人の本は結構読みまくりましたが、将棋の内容についてはあまり気にしていませんでした。渡辺さんは若いのに非常に冷静に物事を見ているため、やはり考え方は非常に参考になりましたが、後半は将棋の解説が多いため、ほとんど読みませんでした。将棋好きには良い本かと思います。ビジネス書としては前半のみ。
あれか、これか
★★★☆☆
永世竜王曰く、「将棋の魅力を多くの人に伝えたい、と思って本書を書くことにしました。
……本書では、将棋を面白く指す、または観戦するための知識とともに、人対人だからこそ
面白い、ということも理解してもらえれば、と思います」。
この前書きで知れるように、基本的には将棋のことをあまりよく知らない人のために
書かれた手引きの一冊なのだろう。巻末には「ルール解説」つき、駒の動きや反則行為など
基礎の基礎から説いている。
冒頭、いかにも『頭脳勝負』との表題にふさわしく、対局中の駆け引きや心理などが綴られ、
これは、と読みはじめるわけだが、そこから先はプロの世界の仕組みなど、非常に
入門的なことがら。最終章はまさに頭脳勝負の実践例として第19期竜王戦並びに
第78期棋聖戦を自ら回顧してはいるのだけれども、やはり結局、どんな読者を
想定しているのか、が今ひとつ分からない。
それこそルールさえも知らない人に棋譜を見せても伝わるものは限られざるを得ない
ように思えるし――たとえそれがいかによくできた入門書であったとしても、実戦を重ねない
ことにはああだこうだ言いたくても言えるようにはなれないだろう――、例えば戦型として
居飛車、振り飛車を紹介してみたりもするのだけれども、それが後々どう効いてくるのか、も
分かりづらい、けれども、あたかも読者が多少はそれを理解しているかのように話は進む。
実際、私などは本書に限らず、プロとド素人の感覚の隔たりの大きさゆえに、陣形の優劣を
説かれても、ああ、そうなんだ、くらいしか思いようもないことしばしばだし。
トッププロが一般市民への普及を目指すのはすばらしいことだとは思うのだけれども、
でも同時に一流棋士にしか書けない濃密な『頭脳勝負』を期待してしまう(無論、例えば
数学の世界がそうであるように、本気でそれに取り組んだら、理解できる人間が極めて
限られてしまうのも一方ではまた事実なのだろうけれども)。
そうした点で、入門書を求める人にとってはたぶんハードルの高い点もあり、
ある程度齧っている人にとってはもっと駆け引きや呼吸を知りたい、とやや物足りず、
そのあたり中途半端かな、というのが読後の印象。
P.S.トッププロを紹介する中で、他の棋士の写真がいずれも対局中と思しきものを
用いられている傍ら、藤井九段だけがプライヴェートにしか見えない写真というのは
明らかに分かってやっているとしか思えないのだけれども、どうなんだ、これ?
とっつきやすく説明された将棋の魅力
★★★★☆
将棋の若手第一人者でありながら初代(そして現時点で唯一の)永世龍王でもある渡辺氏が書いた本.まだ若いのに文章から大物って感じがする.将棋の技術面の入門書ではなく,将棋界入門や棋士入門や将棋の楽しみ方入門といったところ.文章の歯切れの良さとわかりやすさが素晴らしく,前半は将棋のルールを知らない人でも問題なく読んで楽しめると思う.後半はルールを知らなければつらかろうが,付録がルールブックになっているので人によってはなんとかなるかも.
評者には,後半の中心的話題である実際の局面(試合の場面)の説明が非常に素晴らしく感じられた.だって,戦術の細かい話抜きで,将棋をさすときの局面判断の視点をある程度説明できちゃっているんだもん.本書を読んで「久しぶりに将棋を真剣にさしてみたい」と思った.
余談になるが,出版後に「タイトル戦での3連敗の後の逆転勝利は前例がない」の前例になったのも渡辺氏である.
将棋の楽しみ方ガイド
★★★★☆
著者の主張は1点。
「将棋というゲームは難しいが、それを観て楽しむことは難しくない!」
スポーツ観戦の楽しさは、広く一般の認めるところ。
自分がそのプレーを出来なくても「あれぐらい決めろ!」とか「何で今の球を振っちゃうかなあ…」など、ワイワイと口を挟みながら、観て十分に楽しめるわけです。
将棋も同じなんだ、基本的なことさえ知っていれば観て楽しめるんだ、ということです。
つまり本書は「将棋の楽しみ方ガイド」。
下手の横好きである自分としては、これを読んで「将棋観戦ファン」が増えたら、それこそ楽しいなと思うわけですが……。
少し期待はずれ
★★★☆☆
将棋界の期待の新星、渡辺明竜王による一般向け将棋解説本である。
まあ、新書の企画としてはいいだろう。しかし、どういう棋力の読者層を対象にしているのかがはっきりしないので、本としての内容が中途半端なものになっているという印象を受ける。例えば、駒の動かし方を説明する部分がある一方で、竜王戦の自戦記が(ハイライト的ではあるが)載っている、といった具合なのである。だから、この本をはじめから終わりまで全部マジメに読む人はいないだろう。私自身、ルール解説の部分は飛ばして読んだため、実際に読んだページ数は結構少ないのではないだろうか。
確かに、所々に興味深いことが書かれているとは思う。しかし、本全体の「構想」に問題があるといわざるを得ない出来である。次回作に期待したい。