とにかく写真が美しい。雪の室生。桜の長谷。薬師寺のシルエット・・・。特に白眉は70ページの「鑑真和上坐像」だ。しっかりとライティングし、これ以上はないという角度から撮っている。かすかに微笑んでいるように見え、非常に穏やかだ。万里波濤を乗り越え日本にやってきた鑑真の老境の老境の静けさが心を打つ。巻末の写真のクレジットを見ると、入江泰吉/奈良写真美術館とか井上博道氏の名前も見える。第一巻ということで講談社としても非常に力を入れたことが伺われる。

その昔、保育社という会社からカラーブックスという様々なテーマを扱っていた文庫サイズの本が出ていて、「法隆寺」や「東大寺」などが写真で紹介されていた（今でも古本屋にあります）。この本は、それを思い起こさせる。誰もが名前を知っている、そして、いまさら人には聞く事ができない名刹の歴史と概要をカラー写真で丁寧に解説しています。

これから「行こう」とする人は勿論、もっと多くの「行くことが出来ない」人にとっても、日本人だったら買って損はない一冊です。