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米軍再編

価格: ¥2,625
カテゴリ: 単行本
ブランド: ビジネス社
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圧倒的な情報量 ★★★★☆
 先日他界した日本を代表する軍事学者であった江畑氏の作品。氏の作品は確かにマニアックであるが、氏は事実関係の把握を何よりも得意としており、本書も圧倒的な情報量を誇る。米軍に関係する情報はインターネット上に氾濫しているが、そのほぼ全てが英語のためか、なかなか日本人にはとっつきにくいものがあり、米軍それ自体に関する日本語の書物は驚くほど少ない。そんな中、QDRや国家安全保障戦略から在日米軍再編までストーリー立てて論じている本書は実に貴重である。氏の分析は往々にしてディテールに向きがちで、大局的な分析はあまり得意にしていないように思えるが、ディテールも含めて情報を集めたいという人にとって氏の作品はもってこいである。最後に、氏のご冥福を祈りたい。
米軍再編の意味とは ★★★★★
現在、米軍は世界規模で再編成が行われている。日本のマスコミでは、沖縄の基地問題や厚着キャンプへのアメリカ第一軍団の司令部移転問題に絡みクローズアップされている。しかし、日本で取りざたされている問題点も重要であるが、米国が何故、再編をするのか戦略的見地からマスコミは問題点を掘り下げていない点が気になるところである。
本書は米国がどのように国家戦略を達成するために米軍を再編していくかという視点で冷静に分析された資料と言える。米軍は四年ごとに見直しが行われる「米軍戦力構成の四年次見直し」(通称:QDR)に基づき、北朝鮮への対応、対中国戦略、対中東戦略、対テロリズムなど様々な事象に対応するため、米軍再編を進めていることが分かる。
この米軍再編成の主な目的は、素早く紛争やテロとの戦いに備えることである。このためには、部隊の装備見直し、世界各地に展開する部隊の再編、基地の統廃合などが含まれている。この米国の世界戦略構想を見直す課程の中で日本の基地再編や部隊再編に結びつくのである。これらのポイントを押さえコンパクトにまとめられてのが本書の良いところである。
アメリカの世界戦略と在日米軍の役割 ★★★★☆
 戦後既に60年となりましたが、この間我が国には米軍が一貫して駐留を続けており、良かれ悪しかれ、東アジア全域に強いニラミを効かせてきました。その在日米軍が、今まさに歴史的な大変革に直面しているようです。
 本書は、我が国随一の軍事評論家である江畑氏が、この米軍再編という一大プロジェクトに正面から挑み、その意図や背景、歴史的な意義、さらには見通しなどを一般向けに解説するものです。特に気が付いたのは以下の点です。
(1) 米軍「トランスフォーメーション」の解説に比較的多くの紙幅を割いており、これが単なる装備の近代化や組織の合理化ではなく、戦略思考のパラダイム転換に伴う革命的プロジェクトであると主張しています。
(2) 世界各地域における米軍プレゼンスの現状を丁寧に解説することにより、米国世界戦略の中でそれぞれの地域がどのように位置付けられているか、いわば「米国の眼で見た世界像」が明らかにされています。
(3) 在日米軍の現状も丁寧に説明されており、沖縄・横須賀・佐世保などに所在する米軍の施設や部隊が、戦略的なコンテクストの中で如何なる機能や役割を担っているのか、真に明快に示されています。
(4) 末尾の部分では、あるべき再編の方向性に関する著者の個人的主張が簡潔に紹介されています。
 世界中の地名が頻出するので通して読むのは結構ツライものがありますが、その分だけ資料的な価値も大きいと思います。米国寄りでも国粋的でも左翼的でもない、バランスの取れた淡々とした解説となっており、類書が多くはない中、いろんな意味で貴重な一書だと思います。
良く煉られた労作なのか、それとも皮肉なのか ★★★★★
 在日米軍についての著者の提案は「おわりに」(と帯)に書かれています。江畑さんの知識を信頼している人、あるいは世界における米軍の現状について別に知りたくもないという人は最後だけ読んでください。
 つまり本文は、ただの知識の羅列という意地の悪い見方もできるのですが、自らの提案を「現実を知らない空想に過ぎない」(P.395)と言われないために、ひたすら「おわりに」に向けてこれだけの話を過不足無く展開しているのは見事です。これだけでも、物言う学者としては当世随一の態度でしょう。
 さて、それでも読後に残る「江畑提案は絶対実現しない」感は何故なのでしょう。それは国内政治しかありません。軍事的・国際政治的にどんなに尤もな意見を構築しても、国内政治としては絶対に実現不可能な「空想に過ぎない」ということを、この本は、そこに敢えて触れないことで示しています。これがまだ冷めぬ熱意なのか、諦めから来た皮肉なのか、僕には判別つきませんが…