家族の再生
★★★★★
戦争から帰還した父親の精神が崩れていく描写は壮絶だが、それでも本作は『アフター・ウェディング』と対をなす、兄弟の葛藤劇であり、子供が新しい父親を受容していく家族の物語だ。
両作品とも、仕事で旅立つ父親に、子供が「誕生日までには帰ってくる?」と聞くところから物語は始まる。
どちらも父親の存在は変調をきたす。一方は病で死に向かい、一方は戦地で死んだと思われかろうじて生還するも別人のようだ。子供たちは、新しい父親を受け入れようとする。特に「ある愛の風景」では、変わり果てた父親に対する姉と妹の態度の違いを繰り返し描いており、それはそのまま父親と父親の弟の人生の違いとも重なり、家族が立体的に描かれる。
コニー・ニールセンはいい女優だ。
戦争で命を失わずとも、言語化しづらい何かが失われたことが帰還後にわかる。経験が壮絶であるほど、家族であってもよき理解者でい続けることは難しい。バランスを失った家族は、その欠落をどう埋めるのか。『告発のとき』と同様のテーマでありながら、スザンネ・ビアは家族を丹念に描こうとしている。