本書は特定のカルト教団に利用されていた歴史はありますが、この本そのものはあくまでもチベット密教のニンマ派の教えに基づいたしっかりした良書です。重要なチベット密教のマテリアルを含んでいます。
「ゾクチェン」の教えを正面から取り上げた本としては第一のものであると思います。
体系的かつ詳細に記述された各項目は、まさに原色のマンダラを想起させ、解脱へのプロセスを確実に教示してくれるのかと思えるほどだ。
だが、本書を読んで実践しても当然、チベット密教の考えからすると解脱には至らない。
この本を手にする人は、社会通念上、少し“やばい人”か“いっちゃっている人”が多いだろうから、誤読すると危険な内容を孕んでいることは確かである。
また、感受性の強い人が読むと、“心のテロル”が起きる可能性はある。
だが、チベット密教について、ここまで詳細かつ体系的、そしてダイナミックに記した国内の著作は寡聞にして存知ない。
チベット密教に興味のある人は必読の書と言える。