「マトリックス」シリーズのウォシャウスキー兄弟が製作・脚本を担当。彼ららしく、一筋縄ではいかない、新しい感覚が詰まった「アクション・オペラ」と言ってもいい一作。まず主人公がテロリストである点が、通常の作品と一線を画す。第三次世界大戦が起こった後の近未来で、仮面をかぶったままの「V」という男が、国家を倒そうとする。Vの手口は非情だが、国家の独裁ぶりが強調され、悪役は国家へシフトしていく。マイノリティが排斥されるエピソードは、ウォシャウスキー兄弟がことさら描きたかった部分だろう。主人公が仮面をかぶったままというのも、最後まで想像力をかき立てる。
「オペラ」と呼びたいのは、チャイコフスキーの「1812年」や、ジャズの「クライ・ミー・ア・リヴァー」が効果的に使われているから。ロンドンの街をバックにした激しいアクション場面など、妙に荘厳で、ゴージャス感さえたたえているのだ。さらに「マクベス」「ファウスト」などが引用される奥深さも本作の魅力。Vに救われるヒロイン役のナタリー・ポートマンは確かな存在感で、スキンヘッドに剃られる場面にも自ら堂々と挑んでいる。(斉藤博昭)
実はものすごく切ない最上のラブストーリーかも
★★★★★
W兄弟の、魂を震わすうつくしく力強い世界観と台詞の数々や、美しいプロダクションデザインや、古典演劇好きにはたまらないファクターや、ふと民主主義とか自由について考えてしまう政治的に熱い話であることとかは、他の方がたくさん書いている。
私がこの作品で最も特筆すべきだと思うことはそれとは別で、この作品は実は、最高に切ない最上のラブストーリーなのではないか、ということ。
20年ひたすら理性的に計画した“復讐”を実行し始めたまさにその時、通りがかりに偶然少女を助けることになったV。その少女もまた、翌日、事実上彼を助けることになってしまう。
20年間、一人で、復讐が全てだった毎日を送ってきたVにとって、自分以外の誰かに、エッグトーストを焼いたり、その人と好きな映画を一緒に見るという”時間”は、どれほど彼の人生の中で、”予定外”であり、けれども、カラフルで温かいものであっただろう。
当初、予定外の小さな”縁”程度にしか考えていなかったであろうVが、どんどん彼女への想いから逃れられなくなってくる。気が付くと、彼女を心配し、気になって仕方なくなる。気が付くと彼女を思っている。これは、V自身が一番意外だったはず。
自分を拷問した、と激しく詰るEveyにまた自分も取り乱すV、Eveyが出て行ってしまった後号泣するV、1年後の約束の日、来ないであろうEveyを想って彼女の使っていた部屋にたたずむV。来るはずないと思っていた彼女が来てくれたときの、夢でも見ているかのような茫然自失のVと、天使を見るような穏やかなV。そして、仮面越しのキス。Vは震えていた。
銃弾まみれで瀕死の重い体を、最後Eveyのところまで引きずって、彼女の腕の中で息絶えることができたVは、叶わぬ恋ではあったけれども、幸せだったのではないかと思う。
Eveyとの出会いはVにとって、20年間の怒りと復讐と理性だけの人生のなかで、初めての“計画外”の出来事であり、しかし、Vの言葉通り「かけがえのない想い出」だったはず。
好きな人と一緒に食事も出来なければ、直接触れることも出来ないのは、どんなにか苦しいだろうか。でも、時間と「理念」を共有できた、何よりも強い絆。
マトリックスにはないこの切ないラブストーリーこそが、この作品の、マトリックスとは違う深みと温かさの源になっているのだと思う。
だからこそ、何年経っても好きで好きでたまらない。Hugo Weavingはまさに名優だ。仮面に人間以上の表情を宿している。「オペラ座の怪人」もすごく好きだけれど、この作品はそれ以上に好きかもしれない。
語り重視?
★★★★★
マトリックスの監督が制作にかかわっているということで、マトリックスのような常識はずれのアクション映画と思っていましたが、語り重視でこの映画は進んでいくようです。主人公Vの復習を描いた作品ともいえるでしょう。それでも充分に楽しめる作品でしたし、政府のここまでやるかという独裁制には思わず怒りを覚えVを応援している自分がいました。人の命の尊さというものをこの作品から味わうことができたらいいのでは?
p.s. レビューを呼んでいたらナタリー・ポートマンがアメリカ英語で話していて聞きづらいと書いてありましたが、彼女はイギリス英語で話しています。実際アメリカ英語の方が聞きやすいですよ。
嘘と真実
★★★★★
忘れられないセリフがあります。それは「小説家は嘘で真実を語る」というものです。考えてみるとメディアという媒体は真実を伝えているようでいて、その裏に隠された事実もあり、普段我々が信じているニュースなどは実は『作られた真実』なのかもしれません。そんな中であえて虚像の世界から真実を語るものは小説家なのだ、という当たり前のようなことを改めて気付かせてくれただけでもこの映画にはかなり価値がありました。
ナタリー・ポートマンは本当に素晴らしい女優になったと思います。そしてウォシャウスキー兄弟の才能にも脱帽でした。この造られた有り得なさそうな世界の中を通して彼らが思う「真実のもの」を語ってくれたような気がします。
アクションはたいして無いです
★★★★☆
最初はそんなに期待しないで観たのですが、観ていくうちにひき込まれました。
序盤、Vの全国テレビでの演説が印象的で、
それ以降Vの一語一句を集中ながら観ていました。
本当の自由を取り戻すべく、闇に紛れ時に大胆に動く、そして己の復讐も果たさんが為に・・・・・
かっこよすぎですね。
ただしVに好感をもてないままだと、Vの行為はただの悪事にしか見えなかったりするかもしれません。
この映画の評価はVをどう思うかによって変わります。
あと久しぶりに見たナタリー・ポートマンもいい演技してたと思います。
別の意味泣いた
★★☆☆☆
こういうレビューに否定的な意見を書く方も少ないんだろうけど(DVD買ってる時点で結構なファン)、正直微妙でした。
なんていうかアンチヒーロー像を描きたかったのか、反社会体制(といっても現政治体制に問題はあったけど)を描きたかったのか、主題が不明確でした。
意味合い的にはゾロのような性格なんだろうか。
原作は分からないけど、なんだか映画の中では語られなかった裏がありすぎて、その説明が無く、呆気にとられた映画でした。