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路上のソリスト

価格: ¥1,890
カテゴリ: 単行本(ソフトカバー)
ブランド: 祥伝社
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自由とは?幸福とは? ★★★☆☆
 本書をもとにした映画が、ジェイミー・フォックス&ロバート・ダウニー・Jrの共演で公開されていた。映画の評判も良さそうだし、ロバート・ダウニー・Jrがまた頑張っているのかな、と気になりつつも未見ゆえ、本書をとりあえず読むことにした。

 トンネルでバイオリンを演奏しているアフリカ系の男性が、実はジュリアードの出身で、その才能を認められ、ヨーヨー・マとも知り合いだが、統合失調症ゆえに今ではホームレスの路上演奏家というところがドラマティックで人を惹きつける。そこに目を付けたのがコラムニストの著者。
 ちなみに著者のホームページを見ると60ミニッツで放映された、このナサニエルという音楽家の演奏風景や、著者本人、ナサニエルの妹ジェニファーなどが登場する。先にこちらを見て読むと、よりイメージが湧いたのだろうけれど、後だったので、頭には映画の2人のイメージで読んだ。

 統合失調症がどういうものかよくは分からなかったが、ナサニエルが時々突然怒りを発したり、変化を非常に嫌ったりするあたりがそうかと想像できるくらいで、普段は普通に演奏して音楽を生きがいにしている。また著者も最初はコラムのネタとしてナサニエルに近づいたのだろうけれど、路上生活者の様子(ナサニエルと夜を過ごそうとした)やランプというホームレスを救済するコミュニティの活動を知り、また奥さんの弟も同じ病を抱えていたということから、ナサニエルと深くかかわるようになり、この2人がお互いに影響し合っていくところが興味をひく。

 ただ、ナサニエルが完治するということはないので、この本を執筆して終わりとはなっていない。著者のまえがきでも今後も様子を見守る、としている。なので、途中読んでいても終わりなき状態が予想できて、正直しんどいところもあったが、それが現実だと思う。
まあ路上生活をやめたり、コンサートで演奏できるところがせめてもの救いだった。でも路上生活は本人はむしろそのほうが、楽器も盗まれないですむと言い、なかなかやめようとしなかったので、本当はそちらのほうが安心できたのだろうか?部屋に閉じ込められて嫌がったり、そのほうが誰かに物を盗まれる心配をしているのは病のせいなのか?本書によって、自分が常識だと思っていることが覆されるような考え方に遭遇させられた。
統合失調症と言う病気の難しさ ★★★★★
コラムニストであるロペスが、二本の弦のバイオリンで美しい音楽を奏でる路上生活者と出会います。
彼はナサニエルと言い、かつてジュリアード音楽院を統合失調症で中退した経歴を持っていました。
ロペスは、彼のことをコラムに書くことにより、彼を援助するようになります。
そこから、ロペスの苦悩とナサニエルの「気まぐれな」言動に翻弄され続ける援助活動が始まります。

実際にあった出来事だけに、ロペスの困惑ぶりがよく伝わってきます。
と同時に、統合失調症と言う病気の難しさも良く理解出来ます。

この話がハッピーエンドになる要因は、「音楽」と「友人」です。
「音楽」は、激するナサニエルの感情を鎮め安定させます。
「友人」と言う関係は、ナサニエルの心の支えとなり、彼の心を安定させます。

それにしても、統合失調症と言う病気の難しさをつくづく感じさせてくれた本でした。
天才音楽家を救え!コラムニストによる苦闘の実話 ★★★★★
2009年の米映画「THE SOLOIST」の原作。ノンフィクションです。

50代のコラムニストである著者が偶然出会ったのは、ミステリアスな過去を持つホームレスの黒人ナサニエル。美しい音楽を奏で、インテリジェンスに満ちた言葉を語る彼が、同じ街に住んでいながらあまりに悲惨な境遇にあることに胸を痛めたコラムニストは、それまで経験したこともない慈善行為を行うことになる・・・。才能ある路上生活者を自分のコラムに取り上げることで読者の感動を呼ぶ が、「友人」として接することで多くの犠牲を払うことにもなって悩む。だが、見捨てることも出来ず、安住の場を与え「病」の治療 を受けさせようと東奔西走する。

徐々に明かされるのは、精神に異常をきたした音楽家の成功の頂点と、その後の転落の過去。ヨーヨー・マ、ゲーリー・カー等の著名な音楽家も登場してナサニエルの才能を語りますが、失われた輝かしい未来を思うと胸が詰まります。そして、「病」を根治させることの難しさを実感させる場面が幾度も繰り返されますが、周囲に必要なのは、冷静で期待しすぎず、しかも希望を失わない忍耐強い心の持ち方だという事が少しずつ分かってきます。

新 聞のコラムに取り上げられたと言う事からも分かるように、アメリカンドリームの裏側にある人種差別 や競争社会、心に病を得た人々が社会の底辺で苦しんでいる現状等を告発する作品でもあり、単なる「感動のエピソード」とは違って「現実は厳しい!」というため息が聞こえて来るような結末が印象的です。

狂 気に囚われた天才音楽家の物語・・・それは悲劇的な人生としか言いようが無いのですが、一人の人間の奮闘が、二人の関係を徐々に変え、努力と忍耐によっ て、ついには社会も変えていく様子は感動的です。そして、同時に感じるのは音楽の与える「慰め」と「生きる力」、さらには、登場する多くの音 楽家たちの「無私」の姿の美しさですね。