婆さんが経営しているバー素蛾に記者が集まり、た
むろする。記者たちは普段、特ダネ争いでしのぎを
けずる間柄。だが、素蛾に集う記者は何かでつなが
っていた。戦士たちに連帯と安らぎを与えた婆さん
は、戦後の象徴ともいえる。
婆さんは、戦前に台湾から来日し、自分は半分は日
本人だと偽り続け、転々としながら、その類まれな
る社交性によって多くの人から協力を受ける。戦後
復興期の泥臭い人情が通用したからこそ彼女は店を
持てた。そんな婆さんとともに記者たちは戦後とい
う時代を謳歌し駆け抜ける。
そんな時代だったからこそ、記者たちは敵ではなく
「戦友」足り得たのだろう。