美しい雰囲気の作品
★★★★★
「愛のかけらは菫色」のヒーローの友人が今作のヒーローです。
偉大な作曲家で名声をほしいままにしていた彼には人には言えない悩みがありました。
それは事故の後遺症で、常に耳の中で金属音が鳴り響くという作曲家にとって致命的な悩み。
それ以後、作曲活動がまったく出来なくなった彼は自殺をはかるのですが、フッと聞こえてきたヴァイオリンの音に心を奪われます。
ヴァイオリンを弾いていたのは美しい女性。彼女といると耳鳴りも小さくなり、創作意欲がわいてくると確信したヒーローは、名前も告げずに立ち去った女性を探す事を決意。
そしてその決意から五年もの歳月が流れ、幻だったのかと諦めていた所で、ようやく彼女との再会がかないます。
最初のうちは、音楽家としてヒロインの存在を欲していた彼が、徐々に彼女の心を欲するようになる心情の変化や、過去の経験から「創作者」としての彼を受け入れられないヒロインの心境など、とても丁寧に書かれていて感情移入がしやすかったです。特に最後の切ない波乱は主役二人の心情を思うとホロリとくるものが。
音楽をテーマにした美しい雰囲気もまた素敵な作品でした。次回作も楽しみです。
罪深い音楽家と罪深い女性
★★★★☆
ヒーロー・ディランは作曲家で放蕩者。
落馬して頭を打って以来、金属音が常に脳内で鳴っているため絶望し、
自殺を図ろうとしますが、ヒロイン・グレースのバイオリンによって思いとどまります。
彼女のバイオリンを聴いている間だけは金属音が消えることに気づいたディランは、
グレースを5年もの間探し回りますが・・。
画家と駆け落ちしたグレースは5年後イギリスに戻ったものの、
生活手段が限られ貧困にあえいでいます。
楽団として参加したパーティでディランを見かけます。
命を救ってあげたというのに、耳にする噂は自堕落なものばかり。
芸術家にうんざりしていたグレースは、ディランに「女神ミューズだ」と囁かれても、
感じるのは恐怖ばかり、そこでディランは「娘の家庭教師として雇う」と提案します。
ディランとディランの娘との成長を目の当たりにするうちに、
いつしかグレースの心にこみあげてくる愛情。
原題「His Every Kiss」ギルティ罪悪感シリーズ第2作です。
放蕩者・音楽家としては優れているものの、
人間としては未熟なディランが、なんだか可愛らしかった。
切なさも甘さも足りませんが、物語としてよくできていると思います。
前作「愛のかけらは菫色」にも登場するハモンド子爵が気になってしょうがありません。
第3作はハモンド子爵とヴァイオラの物語みたいなので、楽しみです。