蓮如さんは日本史上でも指折りの優れた政治家であり、であるからしてその広告能力がすごかった人だ。御文(御文章)というのは彼が開発した布教スタイルで、親鸞上人の教えの中心をわかりやすく、本当にわかりやすく文章に書くことでこれを広めた。この本の形式は、数ある御文のなかでもとりわけて重用な部分を紹介し、現代語訳し、注釈を加え、さらに著者によるお説教がつく、というようになっている。
つくりが親切であり、門外漢にも入っていきやすい構成になっている。また著者はフランス語が達者なためか、ですます調で語られる日本語の文章も、論理と修辞のバランスがとれていて素晴らしい。言葉に無駄がないのだ。御文は全体を見渡すと同じ内容のくり返しが多くて困りものだが、本書ではその欠点が見事に克服されている。これは著者が御文を知り尽くしていることの証拠でもある。