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神学部とは何か (シリーズ神学への船出)

価格: ¥1,785
カテゴリ: 単行本
ブランド: 新教出版社
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神学が誰にとっても「役に立つ」ことを知ってもらおうという試み。 ★★★★☆
「神学入門」とあるが、神学という学問の初心者向けの概論ではなく、「神学部とは何か」と言っても、神学部の授業内容だとか雰囲気だとかの紹介が中心でもなく(そういったことも書かれているが)、主眼は、一般の人に神学の学びが誰にとっても「役に立つ」ことを知らせることにある。著者の特異な経験が随所に記されていて、とても読みやすい。「1.神学とは何か」、「2.私の神学生時代」、「3.神学部とは何か」の三部構成。専門用語や人名などについて各頁下段に脚注がある。コラムとして五つの日本の神学部(同志社、東神大、関西学院、西南学院、上智、立教)が、それぞれ見開き2頁で紹介されている。

 「1.神学とは何か」では、神学は「見えない事柄を対象とする知的営為」であるゆえに、見える事柄を対象とする現実的な営みの限界、すなわち、人間の限界、社会の限界、制度の限界を知ることができるとする。そして、そのような神学の性質として、「論理的整合性の低い側が勝利する」と「神学論争は積み重ねられない」という2点を指摘する独特の視点は、面白い。

 「2.私の神学生時代」は、入学式での学生運動家たちの乱入のエピソードから、バルト、ボンヘッファー、フロマートカの神学との出会い、そして、外務省入省の経緯とモスクワ留学までの話。

 「3.神学部とは何か」は、ヨーロッパ、アメリカ、日本の神学部事情と提言で、ドイツの牧師は高給取りの官僚のような身分だから学校秀才が多いとか、バルトやフロマートカは学校秀才ではなかったが神学的天才であったとか、教会に行っても「救われた」と実感できなくなってしまっているキリスト教徒が増えているとか、キリスト教徒自身が教会を私的領域としてしまっていて人間関係を煩わしくしているなどの指摘がされている。また、1920〜40年代半ばまでの神学をしっかり勉強しろと言い、日野眞澄、有賀鐵太郎、魚木忠一、熊野義孝、滝沢克己を挙げている。特に魚木忠一『日本基督教の精神的伝統』(1940年)を評価している。

面白く一気に読めたが、タイトルをもう少し工夫できなかったかという思いをしたので、星4つ。
新しい扉 ★★★★★
全く知らぬ世界の話。こういう本こそ本として意義があるように思う。
神学部。筆者も言うように神学部に興味を持つものは日本に1%いないはず。
その未知の世界への扉。その先には2000年近くの歴史によって蓄積され
数々の先人たちが多くの時間を割いてきた。
筆者の書籍は多くとっつきにくいが本書は筆者がいかに神学を広く興味を持たれたいという思いが伝わる。
Key Sentence
P44 モナド論を唱えたライプニッツは「モナドには互いに出入りする窓は無い」一つ一つが独立した完全な世界を表すという意味で、モナドは神学学派の構成と同じである。だから、現にある教派の伝統から離れて抽象的な、価値中立的なかたちでのエキュメニズムの神学が成立するという考えは完全に誤っている。

P45 神学のない信仰は危険。(新興宗教について)本当の問題は、そこにイエス・キリスト以外の救い主が出てくること。(中略)これらキリスト教系新宗教に対してキリスト教徒が抱く違和感の理由は、モーセの十戒の第一戒にはんするということである。しかしこれと同じ事態は、既成のキリスト教会の中にもある。牧師や神父の権威主義や囲い込みがあまりに甚だしければ、第一戒に反しないかと、キリスト教の内側から批判しなければならない。(中略)これも神学の重要な機能の一つである。

P63 マモンの宗教 マモン:富 「全ての人間は何かの宗教の信者」

P93 「自分は本当にキリスト教で救済された」とうことを腹のそこから思わない限り、キリスト教徒には絶対なってはいけない。ただ、キリスト教的なものの考え方やその精神は、日本にたくさん存在するキリスト教主義大学、etcなどに具体的にあらわれている。

P94 国家と共に危険なのは貨幣である。ry貨幣は商品を交換するための便宜から出てきた特殊な商品である。ところが商品はつねに貨幣に交換できるというわけではないが、貨幣は常に商品に交換できる。そうすると、「欲望が何でも実現できる」ということになる。貨幣は、商品交換を行う人間同士の関係から生まれたにもかかわらず何にでも交換できる大変な力をもった物神性を帯びるわけだ。

P102 バルトの倫理学「キリスト教倫理」新教出版社

バルトはサルトルのように「実存が本質に先立つ」と考えた実存主義者とは異なり、人間に無限の自由があるとは考えない。むしろ、人間はあくまで被造物であるから神の戒めの下におかれている。この神の戒めという制約が人間の条件であり、この制約の下にこそ真の自由があると考えるのだ。ry人間は神からの召命を受けた存在なのだ
著者の文章にしては読み易いが、内容はかなり重い一冊 ★★★★★
神学部入門書だけあって、分量もさほど多くなく
著者の文章にしては読み易いが、内容はかなり重い一冊。
長い歴史を持つキリスト教神学の解説のみならず、
やはり本人の出自を語る筆は冴えに冴えている。
今後の氏のこちらの分野での活躍を祈ってしまう。

実は私も神学部を擁する大学の出身者で、
神学部の知り合いも多くいたのだが、
こういう学問/場所だとは知らなかった。

神学部へ進学を考えている人はもちろん
哲学系の分野に興味を持っている学生にも
是非お勧めしたい。
神学が役立つ事を神学者達の生き様や著者の経験を通して訴える優れた神学ガイド ★★★★☆
イエスの言説、西方教会(プロテスタント、カソリック等)と東方正教会(ロシア正教等)の違いや、過去の優れた神学者(カルヴァン、ボンへッファー、バルト、フロマートカ、魚木忠一等々)の生き様や思想、各大学の神学部の情報等々神学に関する情報が非常に分りやすく読みやすく解説付きで紹介されています。

本書のメインメッセージは「神学を学ぶ中で、人間の限界を知ることが出来、(極限的な状態にある)他者との共感が可能となり、これまで見えなかったものが見えるようになり、人生に役立つ(ので神学に取り組んでみて下さい)」というように理解しました。

著者が多大な影響を受けたスイスの神学者カール・バルトの「教会教義学」全36冊を通読すれば、その後の人生が変わると言って過言ではないと佐藤さんは文中で推挙していますが、佐藤さんの著者からは船井幸雄さん、副島隆彦さん、辺見庸さんと共に多大な影響を受けて来たので「教会教義学」に挑戦してみようと思います。また、大学受験前の学生に知り合う機会があれば、神学部が一考に値することを伝えようと思います。
ユニークな著者の人生そのものがあるからこそ語ることのできる本 ★★★★★
このような切り口で「神学部」について読み物としても楽しめる本は今までにはないんではないか?
著者のユニークな人生そのものがあるからこそ、語ることのできる本。
進路に悩む高校生にはぜひ一読していただきたい本だ。
学問として宗教を捉えることは日本人にとっては実は理解しやすいのではないか。