溜飲が下がる思い
★★★★★
英詩は難解である。
一読してすぐに作品世界に入り込み、意味を理解することはできない。
しかし、詩に書かれた一語一語を丁寧に読み込み、読み解いて行くことは、他者の声に耳を傾けることであり、その内面世界に入っていこうとすることであり、同時に、静謐さの内に自らの身を置くことでもある。
しかし、難解であるからして、往々にして、「わからない」といって投げ出したくなる。
本書は、この難解なもの、わけの分からないもの、曖昧で意味の伝わりにくいもの、または、声高に断定するが故に読み手を突き放す効果すらある対象の方へ、手招きして「これはね…」と真摯に解説する。
どちらかと言えば入門編ではあるのだが、自学自習ではそこまで読み込めないことを、鋭く突いていて、胸が空く思いがする。そういうことなのか、なるほど、とか、そういう感覚を抱くことはないけれど、自分の身には覚えがないとしても、そんな感覚も存在するのかもしれない、とか。
外国語で書かれた作品の日本語訳について、著者は疑問を投げかけてはいるが、中に挿入された詩作品の日本語訳は秀逸である。
小説は外で読めるとしても、詩は、私室でひっそり(こっそり)と読むものだ、という思いを新たにした。