《初心者向け》としては、最高の本です。
★★★★☆
その名のとおり、《イギリスの名詩》を100編、選んだアンソロジーです。《初心者向け》としては、最高の出来栄えの詩集です。ただ詩というものは、好きな詩人の作品をまとめて読むことによってこそ、初めて理解できる、という側面があります。したがって、この詩集は、「好きな詩人を見つけたい」、あるいは「ざっと詩を読んでみたい」という人向けかも知れません。いずれにしても、《詩》の世界は、非常に奥が深いので、読んで損のない詩集だと思います。
イギリス文学の確固たる礎
★★★★★
イギリス文学においては、他国におけるよりも詩の持つ影響力が強く、小説と詩が密接に結びついているように見受けられます。多くの小説の中で、ウィリアム・シェイクスピア、アレグザンダー・ポウプ、ジョン・ミルトン、ロバート・ブラウニングといった詩人達の名前が言及され、彼らの詩からの引用を頻繁に目にします。この詩集には、エリザベス朝時代のエドマンド・スペンサーから、20世紀前半のエドマンド・ブランデンまで、100編の詩が収められています。
イギリスにおいても他のヨーロッパ諸国と同様、17世紀初頭のエリザベス朝、清教徒革命後の共和制、王制復古と産業革命を経てヴィクトリア朝へと、政治体制の変化が少なからず起きましたが、それがこの国の詩人達に与えた影響は、ドーバー海峡を挟んだ隣国のそれに比べると小さいように見受けられます。イギリスの詩の根底に一貫して流れているものは、心の深みに沈潜して人間存在全般について観想しているかのような静謐さではないでしょうか。また、田舎や都市の風景と心象の混交ではないでしょうか。通奏低音とも呼びうるそれらの美徳は、信仰心の変化、1789年の隣国における革命、20世紀における階級意識の変化、そういったものによっても削がれることがなかったようです。
イギリスの小説を愛好している方々は、この詩集を紐解くことで、小説を読む楽しみが更に深まることでしょう。また、岩波文庫がシリーズ化している『フランス名詩選』、『ドイツ名詩選』、『アメリカ名詩選』と比較するのも興味深いことでしょう。原文を読解するだけの英語力がない私は、読める範囲内で朗読してみましたが、言葉の流れやリズムを微かながらも感じ取ることができ、非常に楽しめました。
生と死の詩
★★★★☆
イギリスの名詩100篇を集めたアンソロジー。対訳形式になっており、左頁に英文、右頁に訳文が載せられている。注も詳しい。巻末にはタイトルと一行目の索引も付いており、非常に丁寧な仕事となっている。じっくりと英詩を味わいたい人も良いし、初学者にも優れた入門書となるだろう。
訳文は、日本語としての自然さと読みやすさを優先している。とはいえ、原文の雰囲気を伝えようという努力が素晴らしく、感心させられた。
本の性質上、収められているのは短いものがほとんど。その点にはやや不満が残るが、仕方ないだろう。
手頃な対訳アンソロジー
★★★★☆
イギリス文学に接する上で、好き嫌いに関わらず、詩は避けて通れない
ものである。そもそも、かつては散文はくだらないものだとされていて
韻文こそ正統であったのだ。詩は文学の基本のスタイルであるといえる
かもしれない。
この本は、スペンサーの時代から第二次大戦のころまでの詩をまとめた
ものである。英詩の歴史は長くその量も膨大であり、アンソロジーを
文庫一冊で作ることも、それを訳すことも、至難の業である。
しかし予想される批判・つっこみ等に関しては、訳者自身がはしがきで
良く弁解している。そこで読者は、訳者なりにまとめ、翻訳した英詩集
に接するという心構えが出来る。
収録されたのは、スペンサー、シェイクスピア、ベン・ジョンソン、
ミルトン、ドライデン、ポープ、ワーズワス、コウルリッジ、バイロン、
P.B.シェリー、キーツ、ロセッティ、テニソン、ハーディー、TS
エリオット、イェイツなど。恋、戦争、死、宗教・・・と幅広いテーマ
の作品が楽しめる。註もあり。原文対照なので、その場で原典にあたれ
るのが良い点。勿論平井氏の訳が絶対というわけではないから、読者は
それぞれの観点で解釈にトライすることもできるだろう。
質も量も
★★★☆☆
詩というのは翻訳できないと思うけれど、翻訳者は必死で自分の感じた物を形にしようとする。見返りの少ない骨の折れる仕事だと思う。この本のいいところはとりあえず、100も詩が収録されている本がこんなに安価に手に入ってしまうところ。対訳であること。これはほかの岩波名詩選にもいえることで、これから勉強したいと思う人が一番最初に触れるテキストを探しあぐねているのだと思うとこんな本が出てるって凄くラッキィだと思う。
岩波文庫国別対訳詩アンソロジーシリーズ…
★★★★★
岩波文庫国別対訳詩アンソロジーシリーズの嚆矢たる一冊。まあでもアメリカ名詩選のほうが正直おもしろかったけどね。