様々な詩人の作品が収録されているので、新たな詩、本へとつながる、よい出会いの場だとおもいます。
読み応えのあるお得な1冊です。
という有名な一節が含まれた詩も収録されているなど、この一冊でドイツ詩のかなりの範囲を網羅しています。唯一の疑問はヘッセの詩がなぜか『曠原の狼 (Steppenwolf)』であることです。(この詩が収録されているヘッセの小説『荒野のおおかみ』はお薦めだが、詩単体としては彼の『霧の中』などを収めるべきでは?と思います。)
そして戦後ドイツ最大の詩人であるツェランの代表作『死のフーガ』、『賛歌(Psalm)』などが6編入っているのが最も注目に値します。彼の詩が文庫で読めるのはこの本だけです。また最近やっと岩波文庫で詩集が出たばかりのドイツ最大の詩人の一人、ヘルダーリンの代表作も収められています(『生のなかば』はとても素晴らしい作品です)。ヘルダーリンについてはハイデガー、ベンヤミン、アドルノ、ドゥルーズなどが最大級の賞賛をしており、またツェランについても同様でハイデガーやデリダらが一冊の本を書いているほどなので、それらの哲学に興味のある人にも非常にお薦めします。もっとも、そのような難しいことを考えずとも、気軽に手にとって、そして様々な人の作品の世界を是非感じ取って欲しい、非常にお薦めの本です。
有名なゲーテやハイネなどの詩は多く収録されていて、ケストナーやヘッセなどは一編ずつ、と偏りがあるのですが、これは業績や作品の量からいって、仕方のないことでしょうか。それでも一応38人の詩が読めて、コンパクトな文庫で、とても良いと思います。