よいアンソロジーだと思います
★★★★★
信頼の置ける3人のフランス文学者、詩人が編み、翻訳した詞華集です。フランス詩1000年の歴史から文庫本1冊に、しかも対訳のかたちで収める99編の詩を選ぶのはそもそも無理な話ですが、選択の方針は安藤元雄氏の解説に示されています。この大きさなら満足できる内容です。翻訳は、上田敏や堀口大學のような名人芸とは違い、平明さを旨としているようで、ものたりなく感じられる向きもあるかもしれません。
しかし、これは対訳の詩集です。基本的には日本語訳を参照しながら原文を読むものです。正直いってフランス語をまったく知らない人にはややつまらないかもしれません。でも少しでもフランス語を知っていれば、ヴェルレーヌの「秋の歌」でカーン、カーンと響く鐘の音を聴くことができますし、エリュアールやプレヴェールがほんとうにかんたんな言葉でどれほど深い思いを表現しているかに驚くこともできます。ロートレアモンの「マルドロールの歌」やランボーの「酔いどれ船」は、意味がわからなくても、おどろおどろしいむつかしい言葉が効果的なのはわかります。詩は意味だけを味わうものではないですからね。手軽に原文が見られるのはやっぱりいいですよ。
これから入っていくのは難しいか
★★★★☆
先のドイツ名詩選をよく読んでいたころ本屋で見かけて気になっていたのを数年前
やっと購入した。
正直ドイツの詩集とは全く違う詩の体系で面白くないと思ったがフランスの詩は
読んでみねばと思っていたのでちょうど良かった。
詩人もやはり作風はこれらの抄集にあるようなものばかりでないので的を射た
感想ではないかも知れないが、ドイツ詩のような没個人的な雰囲気はまず無く
文化的風習や制度との相克のなかで己の個性について外部的な視点が意識されたような
作風が続くことへは、フランスの文化史と宗教史について考えざるを得ない。
そんななかでランボーのような詩人があったりするのは(フランス詩史としては当然だけど)
読者としては興味を引かれるところ。
もとより歴史にはまったく疎いがまだまだ読み込んでいない。ドイツ詩と比べ内容が
重いので気軽に読めないけれど詩集として没個人的に末長く親しんでいこうと思う。
読み取るべきなのは神話的感覚のドイツ詩との比較だろうか。まだシニカルでないところは
イギリスの詩集との好対照だと思う。
※追記:×「没個人的」、○「個人的」
大変失礼しました。
好きな詩人が見つかるかも
★★★★☆
フランスの代表的な詩人の作品を
これ一冊で、おおまかに読むことができます。
フランスの詩に興味はあるけれど
何から読んだら良いのかわからなかった時に手にとり、ガイドのように使っていました。
この本から気に入る詩を見つけ
今度はその詩人の詩集を探して読む、という方法で楽しんでいました。
欄外に、簡単にまとめられた詩の解説、
また、最後のページに詩人の紹介がついています。
これらも読むと、フランス詩のおおまかな変遷というか流れが感じられて良かったです。
対訳という形で原文もついているし、アンソロジーとしては気に入っている本です。
フランス文学における詩の独立性とその叙情性
★★★★☆
『イギリス名詩選』、『ドイツ名詩選』、『アメリカ名詩選』と共にシリーズ化されている本詩集を、『イギリス名詩選』の後に読んでみたのですが、フランスの詩の特徴を堪能すると共に、イギリスのそれと比較することもまた楽しいものでした。
ヴィクトル・ユゴー、シャルル・ボードレール、ステファヌ・マラルメ、ジャック・プレヴェールといった著名な詩人の作品はもちろん、比較的知られていないルイ王朝下の詩も収められており、フランスの詩の特徴とその歴史的流れを把握するためには、適当な詩集ではないでしょうか。
フランスにおける詩は、イギリスにおけるそれと異なり、文学において独立したジャンルとして確立されているように思われます。また、イギリスの詩においては、外界の事物や事象と心象との混交が多く見られますが、フランスのそれにおいては、心象を詠うことに重点が置かれているように見受けられます。
個人的に興味深かったのは、ヴィクトル・ユゴー、ステファヌ・マラルメの作品でした。「文豪」と称されることが多いユゴーの詩は、一見彼の小説との差異を見せているようですが、彼の小説の根底に流れているものが明確に現れているように思えます。また、難解と思われがちなマラルメですが、ここに収められている彼の詩にはそういったところは見られず、抒情詩としても充分に楽しむことができます。
惜しむらくは、フランス革命(1789年)以前の、ルイ王朝時代の詩が13編しか収められていないことです。王朝下ならではの無邪気な叙情性と奔放さが同居したバラッドがより多く収められていれば、更に興味深い詩集となったのではないでしょうか。私には原文を読解するだけの語学力がありませんでしたので、読める範囲内で朗読したのみですが、フランスの詩に特徴的なリズムと脚韻は心地よいものでした。
何を基準に選んでいるのか分からない
★★★☆☆
自分の知らないような人の詩を読めるのはいい。原文がついているから、ろくにフランス語が分からなくても、なんとなく感じが分かるのはよい。
ただ、選考基準がよく分からないので、これだけがフランスの詩ではないだろうなとは思った。