この本に登場するのはイチローや松坂大輔、野茂秀雄、前田智徳、懐かしいところでは江夏豊など。
また、企画作品として「史上最強の打者とは」「史上最強の投手とは」の2コラムが収められている。
プロ野球の好き者同士、この本のネタを元に居酒屋に繰り出した日には、
会話は尽きることなく続くだろう。
内容をここで細かく説明はしないが、個人的に楽しかったところは、
松坂大輔が怪物高卒スーパールーキーとして、既に大打者であったイチローとの初対戦について、
著者の一球一球への分析と洞察、またそのネタを元にしたイチロー・松坂からの取材コメント。
もう、たまりません。このときは結局松坂がイチローを4打席凡退にとって勝利。そして、
本文で取り上げた打席については三振で全面的な松坂の勝利に終わっている。
そして、松坂が試合後にプレスインタビューで語った一言。「自信が確信に変わりました。」
この一言がどのような心理背景を元に彼の口から語られたのか・・・このくだりこそ、
プロ野球ファンとして知りたい「ストーリー」である。
そう思うと二宮氏の深い洞察や取材力に比して、テレビ・ラジオ中継で耳にする
元プロ野球選手たちの解説者たちがいかにどうでも良い話ばかりを並べているか・・・に思いを馳せてしまう。
普段のプロ野球中継がこれだけの専門性と洞察に深い解説と一緒に放送されていたとしたら
そもそものプロ野球人気の低迷自体も防げたかもしれない。
(プロ野球の試合自体がよりドラマティックであったならば野球中継の品質云々に意見すらも思いつかないかもしれませんが)
前田智徳は語りはじめると広島カープファンの私は自分で止めることができないので、
ここでは割愛します。犠牲者は居酒屋トークで。。。。
印象的だったのは、スライダー主体の投手に故障が多い理由、「ピッチャー受難の時代」における剛速球投手の消滅、について書かれた箇所。また、イチロー対松坂の対決に象徴的な、選球をめぐる投打の駆け引き、2ストライクに追い込まれてからの打率の極端な低さなどは、野球中継を見る際に意識してしまう箇所かも知れない。とにかく、歴史的な薀蓄は言うまでもなく、技術論についても野球ファンにはたまらない一冊である。