実演とかなり印象が異なる
★★★★☆
同じくD.オイストラフを尊敬しているムターの演奏と似たような印象を抱いた。異常に細部へのこだわりが感じられて、こちらの耳を否が応でも引き付けずにはいない演奏である。第一楽章を聴いたあと、これはブラームスを聴いたという感じがしなかった。従来の演奏、それがクレーメルのものでもここまでソリストを印象づけるものはムターの新盤以外にはなかったように思う。シュターツカペレの堂々たる響きで始まるがソロが入ってくると、ちょっとフューチャーし過ぎでは、と感じた。実演でも普段は聞かれないrit.などがあったが、樫本のバイオリンは一つのボーイングの中でも音質が変化するような細かい部分が気になった。後の楽章も同じく細かいアーティキュレーション迄丁寧で、演奏自体は第一楽章と同じだが、印象はそれほど異常には感じられない。樫本はデビューしたての頃とセカンドアルバムでは大きく変化したが、このブラームスはそれをスケールを大きくした感じだ。勿論、チョン・ミュンフンもシュターツカペレも好演で、演奏自体には何の不足もない。ところどころ呼吸が違ってずれている所もあるが、気にする必要はないだろう。この曲の入門には余り向いていないように思う。