文体は平明ですが内容が濃いので、ヒマつぶしにパラパラ読むのには向きません。しかし著者の他の本を読んで感じるところがあった方ならぜひじっくり読んでいただきたい一冊です。かなりの知的興奮が味わえること間違いありません。
本書で最高のオススメどころは、日本に存在する様々な芸能的な表現を、その本質を切り取って解説した「橋本流メディア論」です。マンガから映画、小説、和歌、日本舞踊、ダンス、絵画、演劇、その他もろもろの「芸」に加え、なぜか「女」や「エスニック料理」までも含めて、その真に意味する部分が簡潔に説きあかされています。「演劇」は「マンガに一番近い」とか、「映画」は「絵による音楽」とか、そういうふうに見れば確かにわかりやすいなあ、と思わず膝を叩いてしまうような本質論が、つぎからつぎに展開されていきます。ちょっと驚きますよ。