魅力はあるけど
★★★☆☆
英国バースの仲良し女性教師4人の恋を描く「シンプリー4部作」の第1作。
女学校の住みこみ教師として働くフランシス。クリスマス休暇をすごした大伯母宅からの帰途で大雪のため立ち往生し、同じく立ち往生した貴族ルシアスと貧相な宿屋に避難することになります。
最初は反発しあう2人でしたが、時間をすごすうちに相手の魅力が見えてきて……。
ハーレクインのクリスマス・ストーリーに収録された「金の星に願いを」を読んでから、作者のメアリ・バログに関心を持っていましたが、今回やっと読むことができました。雪に閉ざされた空間で互いの魅力に気づく点、跡継ぎとしての義務を果たすために結婚を迫られているヒーローと身分違いの関係に現実的な対応をするヒロインなど、本作との共通点はかなり多いと感じました。
本作の魅力は、やはりヒーローの衝動的な性格でしょう。軽はずみで驚くような言動をとるために話がややこしくなってしまうのですが、悩んでばかりで動かないヒーローよりはずっと好感が持てます。父である伯爵や妹たちもいきいきした性格に描かれています。
対してヒロインは過去の苦しみのために冒険できない性格。「わけあり」な過去を打ち明けるまでにずいぶん時間がかかり、そのために作品が間延びしているのが残念です。
「犬猿の仲」が…
★★★★☆
雪で馬車が立往生し、不本意ながら同じ宿で夜明かしすることになった
お貴族様ヒーローと女教師ヒロイン。
互いに第一印象は最悪でなにかといってはつっかかっていたのですが
相手のことを知っていくうちに好感がもてるようになり、滞在二日目の晩には
情熱的な夜を過ごす事になります。
でも身分違いの恋だし、そもそもこれは恋なのか?相性がよくて
すばらしい夜を過ごしたのは事実だけど、欲望に身を任せただけのこと。
二人の関係に明るい未来はあり得ない、と現実的なヒロインは彼との一夜を
一生の思い出として胸に秘める事を決意し、彼の前から立ち去ります。
ところがヒーローはおさまりがつかない。愛人関係でもいいじゃないか、
金はあるし、俺はハンサムだし、未来の伯爵だぞ?なんの不満があるんだ!
偶然再会した彼女にあきらめがつかないヒーローはついに結婚まで申し込むのに
彼女はプロポーズを断ります。それが理性的な正しい判断だと頭ではわかるのに
気持ちは納得できない。そして彼女につきまとううちに身分云々の事情よりも
彼女の過去に理由がありそうだとわかってくるのですが、彼女は打ち明けてくれず…
傲慢高飛車なヒーローが生まれて初めてフラれてもだえる様子がたまらない作品。
二人の障壁となる「ヒロインの過去のスキャンダル」がちょっと
え?そんなこと?という肩すかしな感じがしますが、面白かったです。
なんでそんなに
★★☆☆☆
なんでそんなに頑なに拒否し続けるのかヒロインの気持ちがよくわからず・・・。幸せになるのが嫌なのかと思えるくらいでした。そのやり取りがとても長いので内容に飽きてくることもあり。この作者のは初めてなので他の作品を読んでみようと思います。
完璧じゃないって素晴らしい!
★★★★★
訳者あとがきで紹介されていた作者メアリ・バログの言葉、「私の作品に登場するヒーローやヒロインはけっして完全な人間ではありません。男と女が助け合い、苦難を乗り越えて、愛によって癒され、そしてようやくお互いの手に自分の人生を委ねることが出来るようになるのです」という言葉通りに、物語は進んでいきます。
過去のトラウマからなかなか前に進めない臆病なヒロインと、「いいところの坊ちゃん」という感じそのままで子爵の肩書きを持つ子供っぽいヒーロー。完璧ではない人間らしさが作中にありありと表現されていて二人ともとてもリアルに感じられました。主役二人とは逆の立場にある完璧なヒーローの花嫁候補も、完璧であるゆえに冷たい印象を受けるので余計に主役二人が人間くさくて魅力的です。
20歳代のヒーローとヒロインですが、恋愛中心の心理描写が主なのでどこか思春期の恋愛物を読んでいる気分にさせてくれる作品でした。