貴族階級と紳士階級の身分格差「ただ会いたくて」
★★★★☆
「シンプリー・カルテット」と名付けられた、4巻シリーズの第三巻です。
貴族って、ほんとに一握りです。
称号がもらえるのは、長男だけですから。
二男の息子とか、三男の末子とかは「紳士階級」ではありますが「貴族」ではありません。
そして、領地がないから働かないといけない。
この「働く人」は、貴族ではないわけですね。
医者、弁護士、軍人、牧師。
貴族の血をひいたりして(祖父が爵位をもっているとか)紳士階級ですが、貴族じゃない。
その階級差が、本作のロマンスの、枷になってます(^^)
良かったです。
★★★★★
とてもよかったです。せつなさもあって、どきどきもあって、読みやすかったです。ヒーローとヒロインの間の問題もそれほど深刻にならず、全体的にさらっとした印象です。いろいろと言い訳をしながらもまっすぐにヒロインにむかっていくヒーローと忘れようとするヒロインの心の動きも良かったです。
このシリーズはどれもとてもいい感じだと思います。次の作品も楽しみです。
困難を克服する2人
★★★★☆
英国バースの女性教師4人を主人公にした「シンプリー4部作」の第3作。
その学校の生徒から教師になったスザンナがヒロインです。
夏休みに元同僚のフランシスの家を訪ねたスザンナは、近くの館に滞在していたウィットリーフ子爵ピーターを紹介されます。ピーターは女性へのサービス精神に富んだ男性で、周囲の女性たちからはアイドル的な扱いを受けていますが、スザンナはなぜかピーターに冷淡な態度を取ります。
スザンナの態度に興味をひかれたピーターと、ピーターの純粋なやさしさを知るにつれ惹かれていくスザンナ。けれど、スザンナにはピーターとの未来を考えられない理由が……。
2人が親しくなっていく過程のエピソード、心の揺れなど、さすがメアリ・バログらしく丹念に描かれていて、せつなさがたまりません!
やさしいだけのヒーローがヒロインへの愛のために「ちょっと頑張ってみた」のもほほえましいです。
前作『ただ愛しくて』のシドナムとアンが出会った夏に、同僚のスザンナも運命の出会いをしていたわけで、2つの物語は密接な関係があり、前作を読んでいる読者にとってはいろいろなお楽しみがあります。
前作とあわせて読むことをぜひお勧めします。
残念なのは邦題『ただ会いたくて』が原題"Simply Magic"を言い表していない点。
本文には「魔法」とか「竜」といったキーワードが何度も出てきますので、原題のニュアンスを汲んだタイトルにしてほしかったと思います。
ちょっと苦手なヒーローだったかな
★★★☆☆
「シンプリーカルテット」の三作目で、四人の女教師仲間の中で一番最年少のスザンナが今回のヒロインです。
ヒーローのウィットリーフ子爵とは夏の休暇のときに知り合うのですが、実は彼らは初対面ではありません。
子爵は全く覚えていないのですが、スザンナは幼いころに会ったことを覚えており、しかも父親に関する辛い過去のせいで、ウィットリーフという名を激しく嫌悪しています。
子爵は誰からも好かれていると自負しているだけに、初対面からつれない態度をとるスザンナに興味を抱くように。
近づいてくる子爵を初めは迷惑に思っていたスザンナですが、彼の優しさに触れるうちに徐々に心を開いていきます。
しかし彼らには過去の確執と、身分違いという大きな壁が立ちふさがっており、結局は夏の休暇中の逢瀬として別れることになるのですが・・・。
ヒーローはとても愛想がよく、優しい性格をしています。人当たりもいいので一見欠点が見当たらないように見えますが、大事に育てられたお坊ちゃんタイプなので人に強く出ることができず、特に母親には滅法弱い。もちろん本人も自覚しており、そんな自分を嫌っているのですが、なかなか直すことができません。
そんなヒーローをヒロインが変えていく・・・というヒーローの成長が大きく出ている作品です。
作者は欠点を持っている人間が欠点を克服していくという作風を貫いている方で、私もそういう作品を読むのは好きです。
しかし今作は個人的に苦手な欠点でした。確かにヒーローも最後のほうには成長が見られるのですが、それまでがなんとなく優柔不断でちょっとイライラしてしまいました(苦笑)。
今作は残念でしたが、全体的な雰囲気は変わらず・・・だったので次回作に期待!